君の言葉は全て魔法


(現代パロ)


【メールを受信しました】



就活のための企業面接を控えた前日深夜、ぶるぶると震える携帯を開く。
受信したばかりのメールは恋人からのメッセージ。思わず、深夜だと言うことも忘れ着信履歴から引っ張り出した電話番号、発信ボタンを押してそれを耳に宛てた。

「ん…、やっぱりまだ起きてた?」
「ああ」
「イタチなら大丈夫、絶対受かるから」
「そう言われると、そんな気がしてくるから不思議なもんだ」
「ふふ、私が味方だから、怖いものなんてないよ」
「そうだな。」
「だからそろそろ明日に備えて早く寝たら?」

くすくすと可愛い笑い声が耳に響く。
彼女の声を聞いているだけで安心したのか、一気に眠気が増した。俺はもう彼女なしでは睡眠すらまともに取れないのか、と自嘲気味に笑う。

「応援してるから、」

彼女の言葉は、俺にとっては他人のどんな励ましよりも力になる。それが「頑張れ」だとか、そんなありきたりな言葉じゃなくたって、彼女からの言葉なら、例えば

「明日は一緒に晩ごはん食べようね。」

そう、こんな言葉でも。それは俺を奮い立たせるひとつの力になる。
明日はきっと俺の好物ばかりを並べたご馳走なんだろうな。なんて想像するだけで口角が緩む。

だんだん重くなるまぶたをゆっくりと閉じながら、俺は携帯を手放した。





「スーツ似合ってるじゃん!」

企業面接を終え、その足でそのまま彼女の家に向かい、ドアを開けた瞬間に抱き付いてきたのはやっぱり彼女で。久々に見る俺のスーツ姿を散々誉めちぎったあと、あ、そう言えばとおかえりなさいのキスをひとつ。直後、ハッと表情を変えてぱたぱたとキッチンへ戻っていった。相変わらず忙しそうだ。
廊下の向こう側から漂ってくる美味しそうな匂いに腹の虫が鳴る。間違いない、俺はこんな毎日のために、今頑張ってるんだ。

「はー、焦げてなくて良かった!」

出来たばかりの料理を皿に盛り付けている彼女に後ろから抱きつく。首筋に口付ける度にぴくんと震えるさまがこれまた可愛らしい。

「ねぇ、ちょ、っと、」
「俺の就職が決まったら一緒に住もう」
「ん、んん、ぅあ、ご飯が冷めちゃう、」
「晩飯はあとで良い。」

すっかり力の抜けた彼女を寝室に引きずり込みながら、部屋の電気を消す。
どうせ明日は土曜日だ、どうなったって良い。

内定通知が手元に届くまで、あと1週間。



(20131116)

拍手お礼夢



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