「ただいま、」

玄関の戸を開けると、ぱたぱたとやって来ては俺を出迎えるヒメ。もう結婚してから1年が経とうとしているが、仲の良さは相変わらず健在だ。そして彼女は1年前から変わらぬ問いを俺にかける。

「お風呂先に入る?それともご飯先にする?」

つまりはどちらも準備万端だと言うこと、最近は残業で帰りが遅くなることも度々あるのだが、それでもこのお出迎えと問いかけは変わらない。良くできた妻だ。その"良くできた妻"に、俺は少し迷いながらも「風呂」と答えた。とりあえず一刻も早くこの汗を洗い流してしまいたい。俺が脱いだスーツの上着を手際よく受け取りハンガーにかけたヒメは、俺の答えに笑顔で応じてくれた。

「じゃぁ先に入ってて、イタチが上がる前にはバスタオル用意しておくから。」
「ああ、」

二つ返事でネクタイを緩めながら、ふと気づく。ヒメは寝巻き姿ではない。つまり、ヒメもまだ風呂を済ませていないと言うことか。

イタチは、スーツの上着を手入れしにいったヒメを呼び寄せた。

「どうしたの?なにかあった?」
「ヒメは風呂はもう済んだのか?」
「まだ。私は、イタチが入ってからで良いの。」

当たり前のようにそう言ったヒメは、また奥の部屋へと向かおうとする。イタチは、それを慌てて引き留めた。

「それなら、今夜は一緒に入ろう。」

途端に火がついたように真っ赤に染まるヒメの顔。そう言えば、最近は仕事が忙しくて情事の回数も減っていることに今さら気づく。今日は金曜日だし、良い機会じゃないか。そう考え始めたら胸も高鳴った。粗方、ヒメも同じような考えを抱いたのだろう、未だ頬を赤く染めながらも黙って脱衣所に入った。
目を合わせれば自然と重なる唇。こんなふうに、キスをするためだけに交わしたキスは、いつぶりだろうか。お互い揉みくちゃになりながら なんとか脱衣を終え、縺(もつ)れ合いながらもバスルームへ足を踏み入れる。そして久々に見た露(あらわ)なヒメの裸体に、釘付けになる。

「悪い…ヒメ、」

一気に余裕のなくなる心身、思うより早く動く身体、

「イタ、んんっ、」


唇にキス

した3秒後、俺は獣と化した。


さぁ、これからが楽しい時間のはじまり。


2012/05/26
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thanx!! :)


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