上続き

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「銀ちゃん先生は白ウサギちゃんだから白いアル。目が赤いのがその証拠アルヨー。分かったアルカー?」

「おいおい神楽、いくら相手がチビッ子だからってウサギはねぇだろ」

「チビッ子だからこその可愛いい表現アル。チビッ子、特に女の子は可愛い物に目がないって決まってるネ」

「だからってオッサンにウサギは駄目だろ…視覚の暴力っつーか、それこそ苦情殺到すんだろーが」

「せんせー」

ボソボソと話し込む銀時等を遮って、チビッ子が手を挙げた。

「ウサギは人参を食べるんですよね?いつも美味しいですか?」

おぃいいい!ウサギ認定だよ!
純粋なガキ共が、すでに先生はウサギって前提で話を始めてやがりますよ!?

「待て!よくよく考えろ?俺がウサギなわけ」
「せんせー、ウサギなんですかー?」
「ピョンってはねてくださーい」
「むしろバック転してくださーい」
「ニンジン食べてよー」
「ピョンって言ってー」
「早くしねぇと、ニンジンをケツの穴にぶち込んで脳味噌ガタガタいわせんぞ、コラ」

「おいおい、神楽、何か収拾がつかなくなってきてんぞ!どうすんだよ、これ??」

何か恐い言葉が混じってた気がしたけれど、押し寄せるように挙がるチビッ子達の質問の嵐に、助手の新八もたじたじしている。
そんな中でも平然としている神楽は何を確信してるのか「任せるネ」と胸を張って前に進み出ると

「今どきのウサギは跳ねるなんて生っちょろい事はしないアル! ドロップキックを繰り出すネ!」

こう言い放ち、「そうだよね、銀ちゃん?」と同意を求めるように銀時に目を向けた。
期待を込めた眼差しが、神楽から、子供達から寄せられる。
正直その視線が痛い程に、キラッキラッと瞳を輝かせている。

…ああ、こうゆう流れなのね

やれって言ってんのね…

仕方ねぇ…
ここはやるしかねぇか…


ほんとに仕方なと思っているのか、銀時は一瞬目を光らせると

「アチョー!!」

ガッシャーンッ!

チビッ子に向かって走っていき、子供の真横にあった椅子に勢いをつけて蹴りつけた。
真横で見ていたチビッ子はビックリしたのか唖然として銀時を見ている。
やる気の出ない依頼、思う通りに進まない授業に少しやけになって突っ込んだが、やって良かったかも知れない。
チビッ子の反応に幾らかスッキリとした銀時は
「あの女の子もウサギさんだぜー」
と神楽を指差した。

「そうアル!私は夜兎ネ!つまりは夜のウサギちゃんアルー! アチョーーーッ!!」

ガッシャーンッ!!

銀時の振りにノリノリで神楽もドロップキックを披露した。
無惨にも広間の大テーブルが粉々に粉砕される。

「ちょっとぉおお!アンタら何やって」

「アイツは眼鏡ウサギアル」

神楽の言葉に30もの視線が一気に新八へと集まる。
期待を込めた純粋な沢山の瞳に、新八はたじたじとしたものの、「こうなったらやけだ」と走ると近くの椅子に突っ込んでいった。

それに続くように、勢いに乗った神楽が手当たり次第にドロップキックをかましていく。
もう修正が利かないなと沈む新八を尻目に、銀時は「あれがプロレス技の一つ、ドロップキックだ。よーく覚えておけよー。テストに出るぞー」と子供等に教え込んでいる。
まだ依頼を諦めてはいなかったようだ。
無理にでも『授業の一貫だ』と子供達に思い込まそうとしている。
そして、「そうだ、諦めたら依頼料もパーになっちゃう」と気付いた新八も、銀時の『授業』に加わっていった。

こうして、授業が終わった頃には

机や椅子どころか、窓や黒板、壁が歪み

教室の面影は一切残っていなかった。




続く


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