上続き

既に犯人には逃げられていたが、どうせ真選組の屯所にはってれば現れるだろう。
本当に捕まえる気があるのか、銀時はのんびりと屯所に向けて歩いていった。


ガシャーン

屯所に入ると同時に、待っていたかの様にコロ助(暫定)が窓を突き破って室内に入って行くのが見えた。
無茶苦茶する奴だなぁ〜。
そりゃ、勝手知ったる我が家っつーのも分かるけどよ、やり過ぎじゃね?
あ、この部屋、ヤニ臭ぇ。
あぁ、だからか。気にくわない上司の部屋だから、遠慮がなかったんだな。

部屋に入ると、やはり待っていたのか、コロ助は襖の前に立ちこちらを見ていた。

何か反撃でもするかね。


ピシッ

たまたま持っていた輪ゴムを指にかけ、コロ助に狙いを定めて打った。


ずーん

庭に面した障子を開けて現れた近藤に、狙いがそれた輪ゴムが当たり、彼は盛大に倒れた。

あれれ?
輪ゴムってこんなに威力あったっけ?
おいおい、ゴリラも倒せるって、どんな兵器なの??
ねぇ、もしかして、攘夷戦争の時にこれを使ってたら攘夷が叶ってたんじゃねぇの!?

ずもももも…

不毛な事を考えていると、またもや庭から危ない音が響いた。
そこには大分前にロケットランチャーを受けて倒れたはずの男が怒りの空気を漂わせて立っている。

肝心な死体役が犯人の元に歩いてきちゃ、折角のサスペンスが台無しだ。
登場のシーンにしちゃ、音の演出がちゃっちいのも頂けない。


ギシッ

ふむ、この音は及第点だな。

「うわぁ、ありきたりな登場するなぁ。
どうせ、登場するんならもっと迫力を出せって。血を流すだけの演出じゃ生ぬるいんだよ」

気合い入れろよな〜と馬鹿にした言い方に、血はお前らのせいだろうが!と土方は食って掛かろうとしたが、はたと倒れている近藤に気が付くと慌てて駆け寄っていった。

キラキラキラ〜

天から一筋の光りが近藤に降り注ぐ。

パトラッシュならお涙頂戴になる場面も、それがゴリラとなると喜劇にしか見えない。

「…ゴリラでも天国の門は開いてくれんだな。けつ毛まで許しちゃう寛大な神様で良かったね」

近藤を昏倒(←断じて親父ギャグじゃない)させた犯人は誰か、いやこの件の元凶たるコロ助とやらを倒すべきか、その前にさっきから失礼なこの男を拳で黙らせるべきか。
土方は次の行動を考えるが、頭の中が怒りでごちゃごちゃしてしまい考えが纏まらない。
土方が怒りを何処にぶつけるか迷っているのを感じたのか、「コロ助君はあっちに逃げてったよ〜」と銀時は襖を指差し追いかけるように促した。

スパッ

仕事の停滞を恐れてか、逃げていったコロ助を先に始末する事にしたようだ。
襖を開け放って土方は駆けていき、すぐにその姿は見えなくなった。

あ――、楽しかった。
被害者も生き返っちゃった事だし、この辺で切り上げるとするか。

おっと、いけねぇ。
最後の仕上げが終わってなかった。

銀時は何かを探す様に床に視線を走らせると、目的の物が見当たらなかったのか、タンスの中を漁りだした。

ピラッ

新しい死体役を野晒しにするのも忍びない。本当は刑事物に習ってブルーシートを被せるべきだけど、今回はこれで勘弁してもらおうか。
お目当ての物とは違うが、死体に被せる物としては充分だろうと、手にしていた白いハンカチを顔にかけた。


あは

「ははははは!」

ダメだ。
可笑し過ぎて腹がよじれちまう。
は、腹が痛ぇ……
満足した銀時は、帰って行った。

――――回想終わり――――


「皆の話を繋げると、元凶が二人浮かび上がったんだよ…」

「あ―――、土方くん? えっと、やっぱり怒ってる?」

「怒ってるに決まってんだろうが!!」

「まぁまぁ、そう怒んなさんな。旦那だってちょっとお茶目心を出しただけでさァ」

「元凶の一人が何をぬけぬけと第三者の様に話してんだよ!なぁ、コロ助さんよ!?」

「まぁまぁ。コロ助君も反省してる様だしさ、全てを水に流そうじゃないか。な? そうだ!折角人数が集まってるんだし、土方の奢りで皆でパーっと焼き肉パーチーでもしねぇ?」

「キャッホォォォォオッ!!!焼き肉ネ!焼き肉食べ放題ネ〜!!!」

「ちょっ!何勝手な事を」

「よぅし、じゃあ行きますか!」

「「お――――っ!!」」

銀時の掛け声に神楽と沖田は声を張り上げると、三人揃って外に出て行ってしまった。
勢いで押しきられた土方は、同じく残されたいた簀巻きの新八の紐をとくと、二人して項垂れながら後を追ったのだった。


終 わ り




お題提供:@にぃ[ID:11nino]様
ありがとうございました。


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