2号室の憂鬱B
参考人から協力者なった日から加藤さんは警察の人達に付き添われて職場にきている。
それは守ると同時に彼女をおとりにするという意味でもあった。
夕方6時になる前、俺は作業場に入る。
柊「おはようございます。」
涼子「おはようございます。」
柊「今日も東さん達いるんだね。」
ガラスの窓越しに東さんを見た俺は、仕事をしろと言ってるように見えた。
柊「さてと…、今日は意外と客多いけどどうする?」
涼子「う〜ん、今コロッケ揚がるから、もうちょっと待ってて。」
柊「ん、分かった。」
彼女が揚げているコロッケを見て、俺は手の洗い場に立った。
加藤さんはいつもテキパキと仕事をこなしているけど…。
涼子「…あっつう!」
柊「え!?大丈夫?水、水に浸して!!」
少しおっちょこちょいなんだよな。火傷の所をふーふーする仕草は可愛いんだけど、意外冷静。
涼子「大丈夫だよ、ほんの少しだし…。」
柊「だめだって、痕になったらどうするの。」
彼女の腕には赤いあとがあって、水で冷やす。その間に揚がったコロッケを補充する俺に東さんが話かけてきた。
清水「なんか良さそうな雰囲気だな…。」
柊「そんなことないですよ、それより犯人は見つかったんですか?」
清水「いや…、まだ分かってないが、やつは彼女と関わりがある事は確実だ。
つまり、彼女に近づいてくる者の中に。」
柊「犯人がいるって事?」
深い溜め息をついた東さんに慌ててレジの人が、何やらあったみたいで女性はから聞いた東さんがスーパーの駐車場へと向かって行った。
柊「何があったんだろ?」
春華「すいません、ライスペーパーどこですか?」
柊「いらっしゃいませ。ライスペーパーですか?えっと…、ご案内致しますので、どうぞ!」
俺はお客さんをライスペーパーの場所へと案内する。その間にも警察の人達や野次馬なのか店の中から外へと行く人が多く見え目当ての商品の所へと到着する。
柊「こちらの商品で良かったでしょうか?」
春華「あっ、これこれ!ありがとう。」
柊「ありがとうございます、では。」
一礼して持ち場に帰ると作業場の中では恐ろしい光景が待っていた。
柊「あんた、何やってんだ!?」
涼子「来ちゃだめ…、危ないわ。逃げて!!」
金沢「…何よ、私の邪魔するの?」
そこには中年の女性がいて加藤さんに刃物を向けている。
金沢「いいわよね…、あなた。私の大切なあの子は死んで…、あなたは生きてる…。おかしくない?」
柊「何言って…。」
涼子「止めて、早く逃げてお願い…。」
金沢「…知らないのね。彼女は、1年前に起こった連続殺人事件の被害者の1人なのよ。まぁ…、生きてるけどね…。」
1年ほど前に起きた連続殺人事件と聞いて俺は、なんとなく分かってきた。加藤さんはしたを向いて泣いている。
柊「だからって…、どうして彼女がこんな目に合わないとならないんだよ!?」
金沢「みんな死んでるのよ、なのにあのあいつらは…。」
柊「あいつら?」
涼子「…っ、一ノ瀬先生のカウンセリングを一緒に受けてきた人達の事よ。」
なんとなく分かってきた俺は、なんとか東さんを呼びたいがまだ外が騒がしい。
金沢「無駄よ、このために騒ぎを起こしてやったのだから…。」
柊「くそ…、なんでこんな時に。」
クスクスと笑う中年の女性に俺は動く事も出来ずに、彼女は目で逃げろと訴えてくる。どうすればいいのか、立ちすくんでしまって…。早く気づいてくれと願った。
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