転職の道

就職して初めての仕事は一階のフロア、雑誌やら単行本がどっさりと積まれており真新しい服に身を包み名前はドキドキしていた。


「いろいろ大変かと思いますが今日からよろしくお願いしますね、山田さん。」

『はい、頑張ります。』

「じゃまずは今日、発売の雑誌をここに並べて下さい。」


一階フロアのマネージャーである青川茉莉(あおがわまり)の指示により商品を陳列していく。


「こんな感じで。」

『はい、分かりました。いらっしゃいませ。』



手慣れない手つきで並べていると後ろから声が聞こえた。


『あっ、その商品でしたらこちらですよ。』


「あらま〜。あったわ。」


中年の女性が探していたらしく、名前は手渡す。



「ありがとう、助かったわ。」


『いいえ、ありがとうございます。』


「へぇ〜、接客は意外と慣れてるのね。」



『……前の職場も接客ありましたから…。』



あははと名前は苦笑いし、茉莉は話題にしないほうが良さそうだと感じた。



「名字さん…、じゃなくてっ。」


「今は山田さんですよね。」




『へ?』


「新しい先生が来てると耳に入ったものですから。」




背が高く気品ある男性が名前を見下ろしており、はじめましてと彼が微笑んでいる。




「久保田悠輔と言います、お見知りおきを。今後、担当するかもしれませんからご挨拶に伺いました。」


『あっ、はい。よろしくお願いします。』


手を握り、にっこりとする悠輔、その時はまだ言葉通りになるとは名前は思ってはいなかった。


転職の道 終了

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