喫茶店から出た有美は耀司の車に乗り、マンションの入り口まで乗せてもらった。その入り口には彼女を待つ人影が見える。
「たっく、姉ちゃんは、やっと来た…。」
『あれ?野坂くん。どうして?」
「弟くんが君の部屋の前で騒ぐもんだから、来るまで一緒に待ってたんだよ。」
『ごめんなさい、英史がお世話になりました。』
ぺこりと有美が慊人に頭をさげ、英史は溜め息をつきつつ安堵した顔で見ているが耀司の事である事を思い出す。
「じゃ俺は帰る。あんまし心配させるなよ。」
『うん…、ありがとう。気をつけね。』
「あっ、そういえばあの事どうすんの?」
ん?と耀司は振り向き有美もなんの事かと首を傾げる。
「ほら、ドラマ!剣くんから誘われたやつだよ。」
「あぁ…、あれか。」
「…ねぇ、彼も俳優なの?」
こっそり有美に慊人が訊ねるが、わからないと帰ってきた。
『もしかして、さっきの…。御剣くんの話、何だったの?』
「姉ちゃん、知らねえの?」
「あぁ、言おうと思ってたんだが、お前からの電話で途切れたんだ。あいつな、今こっちでテレビとかいろんな所で脚本とかやってるんだと。まぁ、そんなに有名なわけじゃないけどな。
それで、なぜか一緒に作らないかと誘われたんだ。」
『そう…、良かったね。御剣くん、ずっと言ってたもんね。それで…どうするの?』
どうすると訊ねられた耀司は考え中と答え、帰った。
「さてと姉ちゃんも帰ってきたし、腹減った!何かない!?」
『何よ、さっさと帰りなさい。美海ちゃんが待ってるんでしょう?』
「何言って、心配させたのは誰だよ!!」
「あはは…、本当にお騒がせな姉弟だよね。」
慊人は呆れつつ笑ってしまい2人は恥ずかしい気持ちになった。
そして後日、耀司から剣の誘いに乗るとの電話があり、彼も芸能界へと足を踏み入る事になった。