触れている事が多くなった。帰り道で不意にキスされて誰も居ない事を確認すると大人しく受け入れて。与えられるそれを気持ち良いものと覚えた頭は拒否する事がない。少し腰を撫でられるけどぼんやりしている中ではされるがままだ。
ここ最近では首筋まで吸い付かれて赤い痕が残されるようになった。



「はー、疲れたー。今日は一段ときつくなかった?」
「高尾…お前は最近すぐに疲れたと言うのだよ」
「え?そうだっけ」
「何時もと変わらん。まだ体調でも悪いのか?」
「そんな事ないって」


伸びて来た緑間の手に腕を掴まれて驚いてそちらを見ると至って冷静な顔をしている。掴まれた場所が一気に熱を持ってどうしようも無く胸が熱くなった。彼に触れられる時は感じない。自分でも酷い顔をしていると分かって、見られたくなくて横に背けた。もっと彼で頭を埋めないと、どうにかなってしまいそうで。


「すいません、高尾部室に連れて行きます」
「は?いいって!」
「…分かった。高尾、体調管理くらいちゃんとしろよ」
「だから、オレは…」
「行くぞ」


今二人きりになりたく無くて足に力を入れ逆らうとそれ以上の力で腕を引かれ身体を持って行かれる。歴然とした力の差に悔しさが込み上げた。緑間の手がドアに掛かると見慣れた部室が。押し込められるように中に入れられて、続いて緑間も。


「休んでおけ」
「…だから、どこも悪くないんだって」
「いつもより五月蠅くない」
「ちょっと」
「ぼんやりしている、すぐ疲れたと言う」
「…あはは…」
「お前は思ったより嘘が下手だな」


そんなの相手が緑間だからに決まっている。何時だって揺られるのはオレなんだ。
ぐるぐるになった思考に高尾は舌打ちをして緑間を見上げる。そこには酷く苦い表情をした緑間がいて、何かしたかと思った。


「それは、あの男に付けられたのか」
「は…、それ?」
「…ここだ」


いきなり身体を引き寄せられたと思うと首に緑間の息が。ここ、と言われた場所に軽く噛みつかれた。固い感触にぶるりと肩が震えて高尾は困惑に飲み込まれる。何で気にするんだ。今まで関係ない、とどうでも良さそうにしていたのに。食い込むそれが深くなって思わず声が漏れる。


「ぅ、真ちゃん…、やめろよ」
「お前が答えたらな」
「ぁ…、悠ちゃんに付けられた…」


ぴくりと肩に緑間の頬が触れてそのまま身体は下へと。背中に当たるのは椅子で視界には緑間と天井が写った。訳が分からずに混乱していると今までに無いような冷たい目で見下ろされていることに気付いて、


「そうか…」
「真ちゃん…?」
「…高尾」
「え、まっ…、んん」


ゆっくりと顔を落とすと緑間はそのまま高尾の唇を食んだ。抵抗を忘れていた腕を上げてしっかりとした肩に手をつき離れようともがくがびくともしない。その内に中に侵入した舌にびくりと身体を跳ねさせて高尾は硬直した。縮こまる舌を吸い出されて咥内全てを余すことなく舐められて、あろう事か連れ出されて緑間の咥内へと招かれた。まるで自分から望んでいるようで。

「ん…ふ…ぅ」
「…」
「んぅ、んっ…ぷ、はっ」

あの人とは全然違うキス。呼吸を奪い取られそうで苦しい筈なのにあやすように舌を撫でられ啄まれて、力が抜けていく。肩を掴んでいた手は置かれるだけになっていた。
漸く解放された唇は唾液で濡れて、熱く息を吐くだけ。


「…は、ぁ…うぁ…、真ちゃん?」
「…」
「やめ…真ちゃん!何すんの」


ユニフォームを少し捲られて腰とへその辺りをひんやりとした手が触れて。訳が分からない、何で今こんな事を緑間にされているのか。付き合っている相手がいる事も知っている筈なのに。これって浮気になるんじゃないのか、オレを益々最低な奴にしたいのか。

「おい、やめろって…、真ちゃん」
「うるさい」
「ひ、っ…ぅ」

するりと腹を徘徊していた手が意図も簡単に上まで滑って来ると、胸の中心に触れた。知らない感覚が触れられた瞬間に頭に流れ込んで来て、口からは甘えるような声が。恥ずかしさに緑間を睨むと指先に力が込められて忽ち力が抜けた。

本当に何でこんな事されてるんだ。押さえつけられた右手では抵抗出来ない。してしまったら緑間の大事な左手を傷付けてしまうかもしれないから。






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