「ん…、ぅ…っ」


静かな、落ち着いた部屋に唯一聞こえるのは濡れた声。咥内を滑るその舌に歯列をなぞられ舌を吸われると堪らずに喉を突いて息が漏れる。湿った音が耳を打ち互いの唾液を混ぜるように回された舌に全てを任せた。


「ぅ…ん…、はぁ…ゆう、ちゃん」
「和、」
「あ、待って…!これ以上は、しないで」


少し離れた唇で紡ぐと高尾の顎へ伝うそれを熱く濡れた舌が舐めとる。服の下へと潜り込み腹をなぞる手を止めようと上から手を重ねると唇をべろりと舐められた。
再び覆われて、深く口付けられる。気持ち良いと思考は溶けるが何とか留まって。


「ぁ、は…ぅ、だめ…、はなして」
「大丈夫」
「だめ、だって、悠ちゃん!」
「嫌なこと、忘れたいだろ?」
「っ…、でも、こういうのはしたくない」


勝手な事を言っている自覚があり高尾は俯いた。腹を這う手に息は震える。けれどすぐに引き抜かれて顔を上げると微笑んでいた。


「わかった」
「あ、ごめん…」
「きにすんな」
「でも、キスは気持ち良いから、してもいい…」


何処からか生まれてくる罪悪感に、ちらつく緑間に後ろめたさを感じながらも降ってきた口付けを受け入れる。キスは気持ち良いから、受け入れる事が出来た。その先はどうしても譲れない。
卑怯だと頭では分かるのだけど曲げることは出来なさそうだ。



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