椅子を引くと本を読む緑間の前に腰を降ろした。少し顔を上げただけでまた視線は本に戻されたけど高尾はそのまま話し掛ける。 「おはよ」 「ああ」 「あ、そうそう昨日の話。付き合う事にしたんだ」 「そうか」 「すげー喜んでたぜ」 「ふん…お前のようなうるさい奴が好きとは変わり者だな」 「ひどっ!お前寂しくないのかよー、大事な相棒が取られんのに」 「関係ないな」 本を無理矢理奪って閉じると緑色と視線が絡む。綺麗なそれに写る自分は普段通りの顔で、内側をも見抜かれそうで少し視線をずらし何もない綺麗な机で視界を埋めた。 ばっさりと言い捨てられた言葉は真っ直ぐでだからこそ正体の分からないものが心臓を握る。 「真ちゃんは好き人いないの?」 「さぁな」 「え?いるの?」 「そうは言ってない」 慌てて両手を机に突くと鬱陶しそうに眉を寄せて否定される。瞬間悟ってしまう。あぁだからオレが付き合うとか言ってもどうも思わないんだ、考え出すとどんどん傾く思考に高尾はそっと小さく息を漏らす。聞きたくないけど聞きたい、きっと自分はその相手を心底嫌うだろう。何でかなんて分からないけれど。 「…真ちゃんの恋いなら、応援するよ」 正反対の言葉が出た口が気持ち悪くて仕方ない。そもそもなんでこんなに焦る必要があるのだろうか。もう自分には相手がいてそれを決めたのは自分自身。無性に誰かに頼りたいらしくもない衝動に襲われる。 不審そうな表情をした緑間が腕を伸ばすと額に柔らかい感触が。 「熱は、ないな」 「、当たり前じゃん」 「そうか、なら早く前を向け。読書に集中出来ん」 「あーはいはい」 また自分より読書を優先されて、でもほっとした。疼きだした寂しさを埋める為に頭に悠斗を浮かべ、そっと机に倒れ込む。 好き、だ。そう自分は悠斗が好き。悠斗もオレの事が好きで、それって良いことなんだ。好きなのは悠斗だと自分に言い聞かせる。だってそれが一番楽だから。 |