いつも通りの放課後、いつものように必死に練習して。身体的な疲労はその後の成果に全てを掛ければ難なく受け入れる事が出来る。 毎日の積み重ね。だが、今日は一つだけいつもと違う事が起こった。 「高尾、さっさと着替えろ」 「んー…、待って」 「…」 綺麗に整えられた学ランに腕を組んで呆れたような瞳で見下ろしてくる緑間に笑顔を返した。ベルトの穴にフックを引っ掛けて急いで学ランを羽織る。どうやら一番遅くなってしまっていたようでごめんと謝罪を告げた。 「あ、そうそう…聞いてよ」 「なんだ」 「あのさー、オレ今日告白された」 「…で、なんなのだよ」 「いや、それがさ女の子じゃなくて男に」 昼休みに少し廊下へと出た隙に一人の男に話し掛けられた。当然話し掛けられたらそれなりの対応をするもので言われるままに階段の方へと連れて行かれると。少し照れたような表情でその男から好きだ、と言われた。 「どうしようかな、なんて」 「別にお前の好きなようにすればいい」 「…そっか」 やっぱりこんな事言ったってどうにかなるものじゃない。何故か告白された時に頭に浮かんだのは緑間で、珍しく動揺していると男は返事はゆっくりでいいと高尾に告げた。 もやもやした気持ちを抱えたまま高尾は緑間に話してみたものの、こうもあっさりと返されて胸の痛みを誤魔化そうと笑顔を貼り付けた。 もっと執着してくれてもいいじゃん。オレがどうなろうが真ちゃんには関係ないんだ。 「じゃあ、ちょっと付き合ってみようかな」 「遊びか?」 「…違うよ。ただ向き合ってみようかと思っただけ」 本当の事を言うとどうでも良くなってその当て付けだ。でもそんな事を言えるはずもなくて、心に黒いものがちらついて。 何でこんなに笑うのが辛いんだ。 |