文 | ナノ
今日もまたいつも通り綺麗な顔した相棒が待ち合わせの場所に来た。それだけならなんら変わりはないのだけれど、何故かその顔には眼鏡が無いのだ。
うわ、相変わらず綺麗だ。いや綺麗だけど真ちゃんは眼鏡無いと殆ど何も見えねぇんじゃなかったけ?
オレは目が良いから分かんないけど真ちゃんは超近眼だろ。
「真ちゃんどったの?眼鏡は?」
「あぁ…おは朝のラッキーアイテムがコンタクトレンズでな」
「は?まじかよ」
おは朝、コンタクトって…目悪く無い蟹座の人可哀想じゃないか。
チャリのペダルに足を掛けると緑間は何気なくリアカーに乗った。しっかりと見えているようで特に困っていないようだ。ちろりと後ろを見ると緑間は自分でも眼鏡が無いことに慣れないのか時々いつものように左手を鼻筋に当てている。
あぁでも眼鏡の無い真ちゃんとかカッコ良すぎだろ。どっかのモデルさんより綺麗だなんて密かに思い高尾は頬を緩ませた。
いや、ちょっと待てよこんな真ちゃん女子が見たらほっとく訳ないよな。
それはちょっといただけない。後ろで朝から手にしていたお汁粉をちゃぷんと揺らしながら飲む緑間はそんな事考えてもいない。
駄目だって真ちゃん、ちょっと焦った声の高尾に緑間は不思議そうに理解出来ないと嫌な顔をした。
「真ちゃん、自分の格好良さ分かってないだろ」
「意味が分から無いのだよ。集中して運転しろ」
「はぃ、はい分かってますよ。それはいいから今日はオレから離れちゃ駄目だから」
ほら学校が見えてきたこれはどうしたもんかね。うぅん、格好良い彼氏を持つと苦労するなぁ。
高尾は自転車から降りると緑間がリアカーから降りたのを確認してから自転車を立て掛ける。下駄箱へと二人で行く間にもこそこそと女子の声が聞こえてきてたまったもんじゃない。
「みんな、真ちゃんのこと言ってんだぜー?」
「何故分かる」
「お前ほんと、何で分かんねぇの。怖いんだけど」
「何が怖いのだよ」
「真ちゃんのこと取られたら、とか考えんてんの」
階段を同じペースで登っていた高尾は少し立ち止まるとぽつりと零した。取られる、それだけは何としてでも阻止しなければならない。
「取られる、とはどういう…、」
「ん」
開かれた緑間の唇を塞いでやる。するりと緑間の首へと高尾は腕を回しぐっと自分の唇を押し付ける。
朝から何やってんだって感じだけど今日1日は大変になりそうだからと自分への気合いとエネルギー補給という建て前でしばらく続けたのだった。
2013/03/08
眼鏡掛けて無い時でも鼻に手をやる緑間