文 | ナノ

明日は大好きな、オレの全てとでも言える程大切な存在の生まれた日。明日という日があってこそ今こうして目の前の真ちゃんと一緒にバスケをしたり感情を共有したり出来る。オレにとっての一番大切な日だ。

本人は気にしてないのかいつものようにバスケをし終わると黙々と着替えをしている。明日が自分の誕生日だっていうのに。あらら、この感じじゃ忘れてんのかね。熱さでボタンは2個開けたままで鞄に手を掛けると緑間の手を引いた。何だ、と言いたげな目に微笑むと眉が顰められるのかと思っていたのに緑間は首を傾げるものだから可愛いと思ってしまう。真ちゃんって時々、可愛さを出してくる。デレと同じ比率だから滅多に無いけど。

その滅多に無い事を1つ目にする事が出来てますます胸が疼いた。緩む頬は止められず。


「真ちゃん、歩いて帰ろぜ」

「ああ」

「ほら、早く」


緑間は引かれた腕を拒むこともせず、目の前で満面の笑みを見せる高尾を見つめた。あまりに嬉しそうだから、なんというか否定する気は起きずそれをもっと見ていたいと。掴んだ手をするすると下に下げていくと高尾は緑間の指に自分の指を絡ませた。左手で繋ぐ時は恋人らしくいる時で、今それをしたのは明日に向けてだった。


「…ふふ」

「どうした」

「なーんでもねーよ」


本当に理由が知りたいとは思っていないような緑間の問いに胸がじんわり温かくなりながら本当の事はまだ言わない。明日のことは明日言わないと意味がないのだ。だって、たった一度の大切な日だから。ぎゅっと絡めた指に力を入れてみると同じように握り返されて、また笑みが。緩みっ放しの顔はまぁ真ちゃんに見られるならいいや。


「明日は一緒に星を見に行こ」

「あぁ」


まだ見えない星を探しながら上を見上げての提案に頷かれて高鳴る胸と気持ちに嬉々とした表情を浮かべてまた顔に。

笑い声は見えかけた月に溶けた。




 
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