文 | ナノ

最近暑いねぇ。そんな風に生温い風が吹く中高尾は呟いた。言わなくても分かっている事にただあぁ、と短い返事が返ってきた。

「ねぇ帰りアイス買ってこうぜ」

「あぁ」

いつもなら少し考えてから返答するも、今は高尾の言葉に反対する理由がなかった。

「コンビニー」

少しはしゃいだ声で涼しい店内に入っていく。ふぅ、と軽く息をついてアイスコーナーを視界に捉えた。

「ぅー、かいてき、かいてき」

「涼しいのだよ」

「夏好きだけど暑いのはかんべん」

さあーてと、何にしようかな。色々ある中から選んぶのは中々大変だ。

「うーん、…お、これにしようぜ」

「それでいいのか」

「うん。コレ好きなんだよな」

手に取ったのは二つのアイスがひとつになっているもので2人で半分にするのに丁度良い物だ。チョコとバニラ、好きな方を真ちゃんに選んで貰おう。

「ふんふーん…」

「なんだえらく上機嫌だな」

「真ちゃんと半分こ」

「はぁ」

それが嬉しいらしく鼻歌を歌いながらレジへとアイスを持って行く。会計を済ませると、一足先に高尾が店の外へと出て行きにこにこと嬉しそうな笑みを浮かべた。
うん、解せぬ。自分と恋人である高尾は中々理解出来ない所で喜ぶ。そんなに嬉しいのか、頭で考えてみも結局分からない。

「じゃあ、どっちが食べたい?」

「そっちで良い」

そっちと、指されたのはバニラの方でじゃあオレはチョコだねと割った片方を渡す。

「あー、冷たい。美味しい」

「…」

黙々とアイスを口に運ぶ緑間の方に視線を向けると、

「………」

「…」

「…」

「さっきからなんなのだよ」

じっと視線が送られていたのは緑間の口元で今もそこから視線が動かない。じりっと詰め寄って来られて、思わずその額を手で掴む。

「あっはは、ごめん」

「ふん」

「真ちゃんえろい」

「馬鹿か」

何だと思えばこいつは。取り合う事はせずにそのままアイスを食べれば感じる視線。

「高尾」

「なー、んむっ、ん」

開かれた口につい先程まで自分が食べていたアイスを入れ込む。いきなりの事に驚き暫くおどおどしていたがそれから意図を察したのか、ゆっくりとそれを舐めた。ん、と軽く声を漏らすとアイスから口を離す。

「ん、ありがと。バニラも美味しいね」

口元についた溶けたバニラアイスを赤い舌がぺろりとそれを舐めとった。
先程喜んだ高尾を理解出来なかったが確かにあいすを舐める仕草は卑猥だな、と思う。

「ん、いるでしょ」

「あぁ」

そっと差し出された手からチョコアイスを舐めてみると少し苦めでバニラアイスと一緒に食べた方が美味しくなるなと思う。

「あ…」

暑さで溶け出したチョコが高尾の手首まで垂れていきそれを追いかけるように舌を這わせた。
ここが店の前だという事を思い出したのは全て舐め終わった後で自分でも驚く。
きっと熱さにやられたのだ。

「あーぁ、店の前でこんな事していいのかよ」

まるで他人事のように呟く高尾も同じように溶けたバニラアイスが滑る緑間の手に舌を這わせている訳で、くすりと笑いを零した。

2013/06/10

緑高の日

 
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