Uniform



「今日雨降るって言ってたっけ……?」


6月の終わり頃。部活が大会前の練習に入る前にオフとなった。久々のオフなので、友人と一緒にお茶をして、あたしは個人的な用事があったから友人と別れ、商店街を歩いていたらこの雨。折りたたみ傘も持っていなかったので、軒下で雨宿りさせてもらっている。


「ついてないなぁ」


突然の雨をボヤいていると、見慣れた制服が向こうから走ってくる。


「伊月?」
「あれ、名字。お前も雨宿りか?」
「まあね。伊月は今日1人なの?日向とリコは?」
「別にいつも一緒って訳じゃないけどな。今日は1人だよ。ちょっと寄る所があって」
「だって3人ワンセットのイメージ強過ぎて」


走って来たのは同じクラスの伊月だった。彼とは中学からの腐れ縁だ(因みにリコと日向も)。
気まずくなる様な相手じゃなかったので、他愛のない話をする。部活、宿題、テスト……話題は尽きることない。
が、話を遮るかの様にくしゃみが出た。


「くしゃみって大丈夫か?」
「あー、拭きが甘かったかな」


雨に降られて濡れたので一応タオルで拭いてはあったが、ちゃんと拭ききれていなかったらしい。
ずびーっとしていると、伊月が隣で鞄をガサゴソし始めた。


「ほら名字。とりあえずコレ着てなよ」


そう言って差し出されたのは綺麗に畳まれたジャージ。


「大会前なんだろう?風邪引いてる場合じゃないし、着てろよ」


でも、と着るのを躊躇っていると、今日は着てないから大丈夫と返ってきた。そういうわけじゃないけど。

なんだか申し訳ない気もしたけど、お言葉に甘えて羽織った。
すると、袖が余る。あたしは女子としては大っきいほうで、伊月との身長差もあまりない。しかし、大分袖が余った。


「解せぬ」
「いや、解せよ。俺だって一応男だし。ほら」


そう言って、手を重ねれば成る程。一関節分くらい伊月のが大っきい。そんな時、彼の口からちょっといい具合になったこの雰囲気を壊す一言が発せられる。


「はッ!newジャージを買いにニュージャージー州へ!」


「キタコレ!」と叫ぶ彼の手をとりあえず握り潰しておいた。




back