Friend



「なぁ、お前と俺の関係ってなんなワケ?」

ゴロゴロ、ゴロゴロ。
アパートの一室――私の部屋で清志と二人寛いでいると、意を決したように清志が言葉を紡いだ。
何を今更、そんな風には思わなかった。今までも清志は何度も何か言いたげにしていた。
私はそれに気づかないふりをしていた。
だけどハッキリと言わないといけない。あぁめんどくさいなあ。細かいことなんて気にしなくていいのに。

「なにって……トモダチ、でしょ?」

「なんだよそれふざけんなよ轢き殺すぞ」

「物騒なこと言わないでよー。私は清志のこと好きだよ、人としてね。恋愛感情じゃない」

そう言うと清志の表情が歪んだ。私は笑っている。
清志は体を起こして近づいてくると、私を抱え起こした。
見上げると清志の表情はまるで泣き出す寸前かというほど辛そうだった。

「じゃあなんで、」

そう言いかけた清志の言いたいことはすぐにわかった。
なんでキスしたりセックスしたりしたんだよ。そう言いたいんでしょ?
また私は笑った。これは清志への嘲笑ではなく自身に対しての自嘲だ。もしかしたら、清志とはもうこれでお終いかもしれない。

「トモダチでも、キスしたりエッチしたりするでしょ?」

「お前、そんな女だったのかよ」

「そうだよ……和成くんとかトモダチはみんなそう。私のこと嫌いになった?」

放った自分の声が妙に弱々しくて、びっくりした。清志は驚いた表情で私の頬に掌を添えてきた。
そこで自分が涙を流しているんだと気付いた。清志の掌と私の頬のちょっとの隙間に、ぬるりとした生温かい液体の感触がしたから。
なんで泣いてるんだろう。私は悲しくなんてないのに。

「嫌いになんて、なれるワケねーだろ……」

悲しそうな表情でそう呟いた清志の声も弱々しい。
こんな重苦しい空気なんて私は嫌いなのに。楽しいことだけでいいのに。
そんなことを思いながらも私は清志の言葉が嬉しかった。

「じゃあこれからもトモダチでいてくれるよね?」

「……それしか選択肢はねーのか?どうしても付き合ったり出来ねーのか?」

「うん」

別れたり、終わったりしたくないからトモダチという曖昧な関係でいたかった。
私は誰も失いたくないし、でも皆から愛されてるような錯覚は欲しい。トモダチというポジションと体の関係で私の願望は全部叶う。
永遠を望む私には清志の望みが理解出来ない。付き合ったら、必ず終わりが来るのに。
でもこの曖昧なトモダチという関係も、永遠に続かないことなんて頭のどっかで理解している自分がいる。




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