短編 | ナノ

審神者代理と複数の燭台切

「こんにちはー」
「ん? ああ! もしかして君が例の?」
「そうです、審神者代理です。えっと、弟――じゃなかった、あなた方の主、審神者から話は聞いてますか?」
「ああ。なんでも2週間ほど本丸を空けるから身内に代わりを頼む、って言ってたね」
「そうなんです。すみません、弟、兼業提督なもので、あっちもちょっと大変だっていうから……」
「テイトク?」
「すみませんこっちの事情です」
「うん……? まあいいか。短い間だけど、よろしくね。僕は燭台切光忠、青銅の燭台だって斬れるんだよ」
「よろしくお願いします」

(うーんと、渡された資料によるとこの燭台切光忠という刀は太刀というのか……)
(といっても資料に目を通す暇はなかったから今見てわかったわけだが)
(まあ挨拶がてら見ていったらなんとなくわかるだろう……)

「――あれ、誰かお客さんかな?」
「ああ、主の代理の方が来たんだよ」
「なるほど」
(おお、早速新たな刀との邂逅だ。こっから顔は見えないな……というかショクダイキリさんと声が似てる。とにかく挨拶しなきゃ)
「はじめまして、私は弟の代理……で……」
「はじめまして、えっと、主のお姉さま? 僕は燭台切光忠。よろしくね」
「……ど」
「ど?」
「ドッペルゲンガー……!」
「ああごめん、こっちも『僕』なんだ」
(こ、こういうこともあるのか!)
「性能は殆ど変わらないから運用に差はないよ。存分に使ってね」
「あっ、はい、よろしくお願いします……」
「ちなみに見分け方も一応あるんだ」
「あっ、あるんですね!?(よかった……このままではものすごく適当に扱うところだった!)」
「今日の見分け方は少しだけ髪のセットを失敗しているほうがあっちの僕でいつもどおり完璧に仕上がっているのが僕だよ」
「わかるか!!」
「それは聞き捨てならないな。昨日失敗してたのは君の方だよね?」
「しかも日によって出来が違うんじゃねーか!!」

「はぁ、来たばっかりなのに疲れた……」
「ちなみに『僕』はこれだけじゃないよ」
「……ひょ?」
「『燭台切光忠』はあと3振りいるんだ」
「………………全部で5振り」
「ご名答。君は代理だけど……ここにいる間は僕らのれっきとした僕らの主、だ。だから――間違えたりしないでね」
「目がこわい(ガンバリマス)」
「本音と建前が逆になっちゃってるけど、期待してるよ、主。これからよろしくね」






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