短編 | ナノ

燭台切光忠と『二振り目』について

「外が騒がしいね」
「ああ、『二振り目』の刀解で少し揉めているんだよ。本刃には伝えてあったとはいえ、周りが騒ぎ立ててるんだ……主に一期くんあたりが、ね」
「そう」
「一振りあれば十分だから二振り目は刀解する。別に何ら間違ってなくて、納得できる理由だ。刀解されること自体も僕らは何も思わないのに、こうも大事になるんだ。人間というのは理解し難いよね」
「騒ぎ立てているのは人間ではないけど」
「そうだった。――まあ、一期くんからしたら、彼は弟、らしいから。特に親しい存在が物言わぬ資材に戻されるのは気持ちが良いものではないんだろうね」
「一度人の姿を得て顕現したら尚更、か」
「ああ。人間ではないけれど人間のような感情を持ち合わせてしまうなんて厄介だなあ。不便で仕方ない」
「人の姿でないと刀を振るえないのだから仕方ないよ」
「それなら人の器だけ与えて感情なんて厄介なものは取り払っておくべきだったんだ。ただの人殺しの道具として、何も考えず、刀を振るうだけの存在として顕現させてくれれば妙な想いを抱えなくて済むのに」
「今日はよく喋るねおまえ」
「僕にだってそういう気分の日もあるよ」 
「……それは、先日おまえの二振り目を刀解したから?」
「……そうかもしれないね。ところで主、一つ気になる事があるんだ」
「なに」
「君は一振り目と二振り目の区別は付く?」
「何を急に」
「僕ら付喪神を顕現させて『つかう』、主である君は見た目以外で僕らを識別できたりするのかなとふと気になってさ。それで、わかったりするのかな?」
「……正直に言うと、顕現したての同じ刀が二振り並んでしまえばわからない。一振り目と二振り目ならばできる。練度の違いで区別をすることになるけれど」
「そっか。見た目だとわからない、ということでいいんだね」
「そうなる」
「もう三つほど訊きたいことがあるんだ」
「欲張りだね」
「主は二振り目は刀解する主義のくせに、すぐに刀解せず使ってみたりすることがあるのはどうしてだい?」
「個体差があるか確かめている。あと、単純に戦力が足りない時であればつかう。それだけのことだよ」
「ふぅん。それで、個体差はあったのかな」
「ない。おまえたちは基本的に練結で同じ強さにまでなるらしい」
「なるほど。じゃあ二つ目の質問だ。僕らの中身のことを考えたことはあるかい」
「……?」
「性格、だよ。僕らは基本的には同じような中身を持って生まれるけれど、やっぱりつかわれたり育てられる環境で少し違う精神状態になるみたいなんだ。同じ時期に来たと同じ刀だとしてもね」
「……あぁ、それもそうだね」
「例えば――初めての主力太刀ということで大事に育てられて主や仲間のことを大好きになってしまった一振り目の僕と、その直後に鍛刀されて一応育てられたものの、同じ『燭台切光忠』だったゆえに少し扱いが悪くて、それでも主のことを嫌いになれなくて葛藤している二振り目の僕」
「おまえ、」



「主、最後の質問だよ。――僕は、どっちの燭台切光忠だと思う?」








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