今日はとても風が弱い。こういう日にここへ寝転がると、太陽の光と柔い空気に包まれて、とても気持ちがいいのだ。
 僕のまねをするように、ヤナギも隣へ寝転がった。

「そういえば、お姉さんはいつもどこへ行ってるの? いつも同じ服を着て、朝にはいなくなっちゃうよね」

 ヤナギはころころと会話の中身を変える。好奇心旺盛の子どものようだ。
 横になったまま、僕は返事をする。

「学校に行ってるんだよ」
「がっこう?」
「そう。制服着て、勉強しに行ってるの」
「へー。あおいは? あおいは行かなくていいの?」

 どきりとした。ヤナギは真っ直ぐにこちらを見ている。他意のない、純粋な質問だとはわかっているが、この話題になるとどうしても後ろめたさを感じてしまう。

「……行かなきゃいけないんだろうけど、行きたくないから行かない」
「そうなんだ」

 さっぱりとしたヤナギの相槌で、簡単に会話が途切れる。
 「どうして行きたくないの?」へ繋がると思っていた僕の予想ははずれた。あんなに適当な説明で、本当にヤナギは納得してしまったらしい。話題が彫り下がらなかったことに対する安堵感とともに、僕に興味を持ってもらえなかったように感じて、少しさびしかった。 


***   


 小人になる夢を見た。
 僕はおままごと人形くらいの大きさになっていて、小学生に囲まれていた。その中の一人が面白がって僕の体を踏みつける。だんだん呼吸が苦しくなり、目が覚めた。
 現実で僕のことを踏みつけていたのは、姉ちゃんの足だった。どうやらあの後ぼんやりとしているうちに、寝てしまったらしい。
「家に引きこもって昼寝なんていいご身分ね」
 重たいまぶたを擦りながら体を起こす。隣にヤナギはいなかった。外の景色も、大分暗くなっている。もしかしたら今日も森へ行ったのかもしれないと思った。




- 5 -





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -