いっちーの家に行くのは水曜日と土日の週末。なんて一応決まっているんだけど、行きたいときには勝手に行っちゃう。
 今日は金曜日だけど、この間のテストの結果が良かったから、早くいっちーに褒められたくて来ちゃった。
 いっちー遅くなるのかなぁとか思いながらテレビを見てたら、いつのまにか11時。泊まろうか帰ろうか悩んでいたら玄関の鍵が開く音がした。

「おい、着いたぞ、寝るな!」

 出迎えようと軽い足どりで玄関に行けば、いっちーが知らない男の人を支えていた。

「あー? ああ、和市んちー?ははっ」
「そうだよ。何笑ってんだ、酔っ払い」

 いっちーの横で笑う赤い顔した男の人。
 なんの根拠もないただの直感。彼はハルトさんだと思った。

「ほら、ハルト、ちゃんと歩け」

 いっちーの言葉でそれは確信に変わる。
 今すぐここから立ち去りたい。いっちーの隣に本物がいる。それは「捨てられてしまう」という恐怖と結び付いた。唇が乾く。
 立ち尽くしていたら、いっちーがこちらに気付いた。一瞬、いっちーが目を大きく開いたのが見える。ただ俺の存在に驚いただけのようにも見えるし、しまったと焦る表情にも見える。


「えっと……」
「あー、竜二来てたんだね。遅くなってごめん。こいつと呑んでて…あ、こいつ友達で春斗っていうんだけど、」

 いっちーが一生懸命話しているけど、場を取り繕っているように思えていたたまれない。逃げたかった。

「うん、わかったよ。とりあえずもう遅いから俺はもう帰るね」
 俺はちゃんと笑えていたかな。








「さっきの子かあいかったれー……しんせきろこ?」
 呂律も回ってない酔っ払いは、地べたの上にねっころがった。
「ちがう。恋人」
「こいひとだあ? ははっ、それはいいれー」


「……和市、昨日のことなんだけど」
「なに?」
「言いたいことは色々ある。けどとりあえず、未成年はやめろ」
「……あんだけ酔っておいて覚えてるのか」
「ああ。……和市が、僕と三嶋の交際を応援してくれたのは嬉しかった。でも僕は和市と未成年の男の子の交際に賛成できないよ」
「しなくていいよ。ただ、すきなんだ」






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