「和市とは別れなさい」

 放課後、偶然道で出くわしたのはハルトさん。見なかったフリをして逃げようとしたら、こっちに気付いたハルトさんに捕まって、近くにあったファミレスに連れ込まれた。
 ハルトさんが頼んでくれたメロンソーダを飲んでたら、そう話を切り出された。むせた。別れてほしいってことはハルトさんもいっちーが好きなのかな。俺の知らないところでいっちーの恋が実ったのかな。そうしたら俺は邪魔者だ。


「……嫌だって言ったらどうしますか?」
「どうしますか、って言われてもな…」

 ハルトさんは困ったように笑った。実際、困ってるんだと思う。俺さえここで首を縦に振れば、全部丸く収まるんだもんな。



「俺、いっちーが好きです。だから、いっちーから別れようって言われるまでは一緒に居たいです。ダメですか…?」

 もしかしたらそれは今日かもしれないし、明日かもしれない。でも最後まで粘りたいなっていう意地。馬鹿みたいだけど、でも第三者に終わらされるような関係なんて悲しすぎるから。



「…………どう言っても和市が君と別れそうにないから、竜二くんのほうに話をしているんだけどな」


 むせた。鼻からメロンソーダが出てきた。

「いっ、いっちーは俺と別れたくないって言ってるんですか……?」
「うん。和市は竜二くんにベタ惚れみたいだし、俺が何度別れろって言っても聞き入れてもらえないんだよ。おまけにのろけられたりもして良い迷惑だ」

 なんかこんがらがってきた。俺の小さな脳みそで一生懸命考えては見るんだけど、ハルトさんの言ってることがちょっとよくわかんない。


「僕だって友人の交際に口出しなんてしたくないよ。でも、君はまだ子供で和市は大人だ。不純な行為を働けばそれは犯罪になる。ほうっておくわけにはいかない。君のためでもあるんだ……和市とは別れなさい」

「……ちょっと待って下さい。俺といっちーを別れさせようとしてるのって、俺が未成年だからなんですか…? ハルトさんもいっちーのことが好きだからじゃないんですか?」
「…俺が?和市を?」

 ハルトさんは目を大きくして笑ったあと、声をたてて笑った。

「あいつは良い友達だよ。とりあえず、今後の交際について和市と話し合うといい」





 少しして俺とハルトさんはファミレスを出た。結局おごってもらった。そのままいっちーの家に向かう。今日は水曜日。





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