「ったくよー、あの堕王子おもいっきし殴りやがってー」
ブツブツ、呟きながら歩いているのは、カエルの被り物をしている少年。
因みに今は、午前2時。
「おおーこんなところに海があったんですかー」
少年が歩き、たどり着いたのは
――…海だった。
よく見ると人がいる。すると、カエルの被り物をした少年は眉間にシワをよせ、
「チッ…先客かよ」
そのまま、少年は立ち去ろうとするが、少年はあることに気づく。
「は…?…にん、ぎょ…?」
先客は美しい人魚。しかも、怪我をしていると来た。
ザッ…と、少年は人魚に近づいた。
「ちょっと、アンタ大丈夫ですかー?」
「う……に、んげ…ん?」
背中に大きな傷。止血しなければ…人魚はきっと死んでしまう。気付けば少年は着ていた隊服を脱ぎ、応急手当てをしていた。
「…あ、りがと…」
にこと笑う人魚には、どこか、大空のアルコバレーノを思い出す。
「いいえー」
「ありがとう…でも、帰らなくちゃ…」
「は…?傷…」
まばたきをした瞬間には人魚は居なかった。パシャンと冬の海に音が染み入った。
不思議な夜だった。
(隊服…意味ないじゃねえかよー…)
××