「……やべ、朝だ」

気がつくと外は明るくなっていた
ふと隣を見ると花音が気持ちよさそうに寝ているが、起こさないとならない

「花音…起きるぞ」

「………うーん、」

返事は一応しているが、反応はない

「花音、遅刻するだろ」

「…わかってる」

それでも目は開いていない

「もう知らねえからな」

と口では言いつつも、花音を起こさないようにベッドから出ると、昨日の夜に散らかしたままの制服やら下着が床に転がっていた
シワにならないように制服をハンガーに掛けると、ひとつの疑問が浮かんだ。…花音の下着をどうしようか。机に置いとくのもなんか違う気がするし、放っておく事もできない

「…………ま、一緒に掛けとくか」

結局花音の制服と一緒に掛けておく事にした




「とーしろ!?ちょっと!!」

しばらくすると花音の騒がしい声がして、俺は花音の寝ていた部屋へ向かった

「あの掛け方なんなの?!えげつない!!」

花音の指差す方を見ると、俺が掛けた制服とその上に下着が堂々と主張するようにあった

「んな事言ったってしょうがねえだろ、寝てる間にパンツでも穿かせておいた方がよかったか?」

「そういう意味じゃなくて!もう!……あと、冬獅郎さ…何か着てよ」

「は?普通だろ」

シャワーに入っていた事もあって、俺の格好はスウェットのズボンだけだった

「上半身裸じゃん!恥ずかしいから早くして」

「全裸に言われたくねえよ」

「んなっ…!!馬鹿!!」

顔を赤らめて布団で鼻までを覆った花音。その姿が可愛くてしょうがない

「シャワー入って来いよ、そこにあるタンスから適当に何でも着ていいから」

「……うん」

まだ少し膨れ顔の花音にそう言い残し、ドアを閉めた。

そうしてしばらく待ったが、いっこうに花音が部屋から出てくる雰囲気はなく少し不思議に感じて、ドアを開ける

「…花音?入るぞ」

部屋に入ると花音は俺のTシャツを着て床に倒れていた

「花音?!おい!!花音!!」

倒れている花音を抱き寄せ、何度も名前を呼んだ。もしかしたら、このままいなくなってしまうのではないかという、どうしようもない焦りと恐怖が襲ってきた

「………あ、冬獅郎だ、……どうしたの?そんな怖い顔して」

うっすらと目を開けて、花音は俺に笑いかけた。俺は、花音が折れそうなくらい抱きしめていた

「………よかった…」

「心配かけちゃったね、ごめんね大丈夫だから」

当の本人は全くひょうひょうとしている。俺の心配までする始末だ

「なんかいきなり意識ぶっ飛んじゃって」

「花音……、無理するなよ」

「うん、全然平気。それより…すごくおでこが痛い」

「見せてみろ」

花音の額を見ると、確かに額が赤くなっていた。倒れた時にぶつけたんだろう。そこをわざと押すと、花音は痛いと叫び涙目になった

「ほんっと有り得ない、痛いって言ってんのに」

「そんな怒んなよ」

怒る花音をなだめようと頭を撫でると花音は急に大人しくなる

「犬みてえだな」

「わん」

「猫みてえだな」

「にゃー」

「馬鹿みてえだな」

「………絶対許さないから」

俺達はそのまましばらく見つめ合って、

「…ふっ」

「ふふ」

どちらともなく笑いあった






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