「今日は病院寄ってくから、ここまでで大丈夫だよ」

「そうか…気をつけろよ」

「ありがとう、また明日ね」

手を振り、冬獅郎と別れてしばらく歩いていると

「えっ?!」

いきなり肩をがっと掴まれた

驚いて振り向くと、そこには冬獅郎が息を切らして立っていた


「やっぱり…送ってく」

「……ありがとう」


すごく嬉しくて、思わず冬獅郎の手を握ると、さらにぎゅっと握ってくれた

私は、この上ない幸せを噛み締めた

今こうして私を大切にしてくれる冬獅郎が隣にいる。私の未来が仮に悲劇に満ち溢れていたとしても、きっと一緒に越えていけるし、一緒に越えてくれる、そう思った






「あ、私来週入院するから」

「は?!なんでそれを早く言わねえんだよ」

診察が終わって、ロビーに行くとそこには冬獅郎が待っていた。

「んー、毎日幸せすぎてそんな事忘れてた」

「……あほか」

冬獅郎は私のおでこに軽くでこぴんをして、人目もはばからず抱きしめた

「痛いばか」

「馬鹿はお前だ馬鹿」

「怒んないでよ」

「怒ってねえよ、ただ…」

"もう少し、俺になんでも話してくれよ"と冬獅郎は悲しそうにしていて、私は何故冬獅郎がそんな悲しそうにするのかがわからなくて、何て冬獅郎に言えばわからなかった。でも、冬獅郎に悲しい顔して欲しくなくて、私はただ笑っていた


「冬獅郎、明日なんか大事な事あったっけ?」

「明日は……、英語のテスト」

「結構やばいやつ?」

「わりとガチだな」

帰り道で明日の予定を確認するとまさかのテストが。全く勉強していなかったし、こんな調子だからきっと合格点まで到達するにはかなりの勉強が必要になる

「うわ…どうしよう」

「うちで勉強して行くか?ここからなら俺の家の方が近いだろ」

「え、いいの?お家の人とか…」

「一人暮らしみたいなもんだから気にするな」

そういえば、冬獅郎の家に行くのは初めてだな。なんて思いながら歩いていると、本当に病院から近くてすぐに着いた。かなり立派な家で一瞬入るのに戸惑ってしまった

「おじゃましまーす…あ、冬獅郎の匂いする」

「俺ん家だから当たり前だろ」

それから冬獅郎の部屋に直行すると私達は3時間くらい本気で勉強した。冬獅郎は相変わらず優秀で、私になんでも教えてくれる。

「冬獅郎は辞書要らないね」

「花音は前から英語は出来ねえもんな」

「そうなんだよー、でも一旦休憩!疲れた」

「しょうがねえな」

私は質素な冬獅郎の部屋をベッドに寝そべりながらぐるりと見渡した

「いきなり私来ちゃったのに片付いてるね」

「普通だろ」

あまりにも綺麗に片付いているのは、やっぱり冬獅郎の性格そのものなんだろうか

「冬獅郎もこっちおいでよ、休憩しよ」

私が冬獅郎を手招きすると、冬獅郎は少し顔を背けて

「さっきからパンツ見えてる」

と、かなり気まずそうに言った

「お前は本当に……、……誘ってんのか?」

でも、そう言い終わる前に冬獅郎が私に被さって、気がつくと私の視界には冬獅郎でいっぱいになっていた

「嫌なら今のうちに言えよ、後からじゃ止められねえぞ」

「ひとつになったら…冬獅郎の心も気持ちも少しはわかるかな?」

「……さあな、でも……」

「あっ、」

「心も繋がれる気がする」

初めて見る男の人の身体は、すごく綺麗で、たくましかった。冬獅郎は割れ物を触るかのように優しく私に触れ、身体中にキスをした

「…どうだ?」

「すごい幸せだね、…冬獅郎」

冬獅郎の身体はとても温かくて、初めて見る余裕のない冬獅郎の表情も、ひとつになった時に見せた笑顔も全てが愛おしく感じた


体温計も壊れるくらい

私の身体は確実にほてっていたに違いない



「…冬獅郎、私勉強しなきゃ」

「…………」

冬獅郎は私を腕の中にすっぽり抱いたまま、規則正しく寝息をたてている

「……最近ずっと気を使わせてたね、疲れて当たり前か」

冬獅郎の寝顔はとても無防備で、いつもの冬獅郎とのギャップについニヤけてしまう

腕の中から出られそうにもないし、と私も冬獅郎の胸に額をつけて少しけだるい体を休ませることにした





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