〇月×日

今日から日記をつけようと思います

きっかけは冬獅郎が書けって言ったから。私は三日坊主だから、どうせすぐ辞めたくなっちゃうけど、きっとそうなると冬獅郎がうるさく怒るから一応頑張ります

今日、この日を忘れませんように


「…なんだこの日記」

「だめ?」

「いや、…最後の文、どういう意味だ?」

「そのままの意味だよ」

私の全てを失っても
冬獅郎を想う気持ちだけは、絶対に失わないと決めたの

「意味わかんねえ」

「そのうちわかるよ」


決して誰もわかるはずのない未来がもしわかってしまったなら、決められた未来があるなら

私は、ただ一人の人を愛していたい

私はこの人に全てを捧げたいのです







「日記、書けばいいんじゃねえか?」

「え?」

唐突に言われた冬獅郎の一言

「そしたら、全て無かった事にはならねえだろ?毎日の日々が」

「確かにそうだね…、うん、やってみる」

それから私は毎日冬獅郎と一緒に日記をつける事にした。何故冬獅郎と一緒かと言うと、ある日の日記があまりにも面倒くさくて
"〇月×日 コンビニ行こうと思ったがやめた"だけの日があった。それに冬獅郎はたいそうご立腹になって

「…てめえの一日はずっとその葛藤で終わってんのか」

「…………うん」

「嘘つくな、面倒だっただけだろ」

「いや、本当に一日中…「花音、俺を怒らせる気か?」

「う…、ごめんなさい」

このやり取りから、冬獅郎の厳正な監視のもと、日記を書くことになった





「ねえ、冬獅郎」

「なんだ?」

「冬獅郎は、私の事怖くない?」

「は?なんでだよ」

私は放課後の教室で日記を書いている時、ふと冬獅郎に聞いた

「記憶がなくなるんだよ、私が私じゃないんだよ?そんな彼女怖くない?」

「1番そうなるのが怖いのは花音自身だろ?だったら俺は花音が辛いとか怖いと思う瞬間を少しでも減らすんだ」

冬獅郎は私の方をちらりとも見ずに、学級日誌を書きながらさらっと答えた

「…冬獅郎はずるいよ。そうやって、私の気持ちをいつもさらっていっちゃうの」

「は?」

「ううん、なんでもない」

「花音、」

「ん?…っ」

いきなり私の唇を奪った冬獅郎は意地悪く笑って

「お前も、そうやって俺の気持ちをさらっていってんだよ」

私を抱きしめながらそう耳元で囁いた、この時私の視界に入る世界はどんなに綺麗な宝石よりもきらきらしていた

「花音は何も心配するな、俺がついてるから」

「………うん」

ねえ、神様
私はこんなにも幸せでいいのでしょうか

ねえ、神様
こんなにも幸せなのに、あなたはこれからどうやってこの幸せを奪っていくの?

「冬獅郎……」

「あ?」

「好きだよ」

「…ばーか、…学級日誌出して帰るぞ」

そうぶっきらぼうに言う冬獅郎の顔は、ほんのり赤くなっていた





しおりを挟む