花音は泣いていた

花音の涙を見るのはこれで2回目だ

理由はわからない、見当もつかない

ただひとつ分かるのは、俺を求めているということ

だったら俺はそれに応えるだけだ






「おい」

授業中、隣で肘を付きながら明らかに爆睡している花音の肩を軽くたたいて起こす

「うわあ、寝てた」

びくっとして起きる花音があまりにも可愛くて、俺の口角が上がってしまう。それを見た花音は、少し不思議そうな顔していた

「なんで笑ってるの?」

「べつに」

「変なのー、冬獅郎が笑ってるなんて今日は何か起きそうな気がする」

「てめえのアホ面した寝顔が面白かったんだよ」

「んなっ!」

からかったその反応がまた楽しくて、何度でもいじわるをしていたい

「日向!うるさいぞ」

「えっ!?」

「なんだその返事は」

「いえ、……すみませんでした」

教科担任に怒られた花音はすぐに俺を軽く睨んだ

「なんだよ」

「冬獅郎のせいだ…くそう」

ふてくされた花音の機嫌をそろそろ直そうと、俺は花音の机を俺の机にくっつけた

「…なに」

完全に機嫌を悪くしている、本当に面白れえな

「テスト悪かったんだろ?数学、教えてやるよ」

「自分で出来るからいーの」

「へえ…、おいこっち向けよ」

「やだ」

「向けって」

「やだって言ってるじゃんしつこい」

窓際の一番後ろの俺の席
窓のカーテンが良い感じに強風で大きくなびいている
そのカーテンがほんの数秒だけ俺達を包んだ瞬間、俺は不機嫌な花音の頭をがっつり掴み、無理矢理唇を奪った

「へっ!?!?ちょ!?」

顔を真っ赤にしている花音

「日向!何回言わせるんだお前は」

「…すみません」

「日番谷、そのカーテンなんとかしろ。あと日向をどうにかしてくれ」

「わかりました」

花音をちらっと見ると、そそくさと自分の机を元ある場所に戻していたが、まだ顔は真っ赤だった
俺はカーテンがなびかないようにしっかりと留め、席につくと俺の机にメモがのっていた

そこには花音のでっかい文字で"バカ!!!"とだけ書かれていたけど、その表情は決して怒ってはいなかった





「あの、授業中に…、ああいうことするのやめてくれませんか?」

「え?!ご、ごめ…「何がだ?」

授業が終わったあと、花音の席の隣の吉良が俺達の側まで来た。俺と花音のキスを見ていたらしい。俺はあえて知らないふりをして吉良の様子を伺った

「だから、さっきの、…そういう、君達がしてた事だよ」

「何の事だ?まあ花音がうるさかったのは悪かったな」

「冬獅郎、」

小声で花音は俺をなんとか止めようとしていた

「き、君はいつまでしらばっくれるんだい?」

「うるせえな、てめえがいつも花音の事ちらちら見てるから気づいただけだろうが。授業中は真面目に前だけ向いて勉強してろ」

「「なっ?!?!」」

花音と吉良の顔は真っ赤になっていた。俺はその二人を置いて教室を出ていく

「冬獅郎!どこ行くの?!」

「購買」

…たまには見せつけてやんねえとな
花音は俺の女だという事を。





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