私は弱い だから、ひとりじゃ抱えこめなくて いつもみんなに強い子って言われてたけど、本当は誰よりも淋しがり屋で 一人でも分かってくれる人が欲しかった あわよくばそれが想いを寄せる人だと幸せだと思っていて…そして、それは叶ってしまった、最高の形で 神様は、まだ私を見捨てていなかったみたい。 「冬獅郎、」 この言葉が私を唯一救ってくれる 「なんだ?」 「好き」 そう言うと柄にもなく赤くなる冬獅郎。愛おしくて仕方ない 「花音、こっち向け」 言われた通り冬獅郎の方を向くと、簡単に奪われてしまう唇 冬獅郎は言葉より態度で示してくれる。私を包んでくれるように優しく抱きしめてくれる。それがいつも心地よかった 付き合う前よりも、今の方が好きで好きでどうしようもない だから、幸せに隠れて私の不幸はなかったかのようにさえ思えた …なかった事になんて絶対ありえないのに 「……なんだっけ」 思い出せない、何をしようとしたのかを。 それを思い出すのにしばらく悩むと、玄関からは「すみませーん!」と、叫ぶ声がする。 「はい、なんですか?」 私が玄関に行くと、宅配便のお兄さんが少しイライラして私を待っているようだった 「印鑑、まだですか?」 「あっ!ごめんなさい!!」 そうだ、私は印鑑を取りに行こうとしていたんだ 慌てて印鑑を探して、ようやく宅配便を受け取る。 前まではこんなことなかったのに 神様が幸せボケをしている私に罰を与えたのだろうか 「日向、お前この点数はなんだ」 「…すみません」 「このままじゃ、特進クラスから落ちることになるぞ」 「……………」 職員室で担任の先生と個人面談をすることになってしまった ここ最近のテストの点数が悪すぎて、私はこのままではこの特進クラスから普通の進学クラスへ落ちてしまうらしい。つまり、冬獅郎とは離れてしまう。 「失礼しました。………」 職員室から出ると、冬獅郎が壁にもたれかかって私を待っていた。 「…どうした」 「ん?なにが?」 話す気なんてなかった、冬獅郎には絶対言えない。それは怠惰でこんな事になったのではなかったから。 「なんで俺に隠すんだ」 「何もないから大丈夫、進路の話だよ」 決して嘘をついているわけではない、それでも冬獅郎は納得してくれるはずもなかった 「花音」 「…テスト悪くて、このままじゃ特進にいるのが厳しいみたい」 「…………そうか」 冬獅郎は一瞬眉を潜めたが、それからは何も聞かなかった。きっと、そんな簡単な話ではない事くらい分かっていたのだろう。 そのかわり、いつもより手を握る強さが強い気がした しおりを挟む |