この罰は死後にとっておく



「あなたに、何が分かるの」


花音は、鋭い口調で俺を突き飛ばす

毎回、俺にこの言葉を放ち
俺をただひたすら困惑させた


「私だって分かってる…、だめだって」


じゃあ、俺はどうすればいい?

何度も差し延べたこの手をどうすればいい?


「忘れる必要なんてねえよ」

「忘れるわけないじゃない、絶対に忘れられない。むしろ忘れたいくらい」


花音が何を求めているのかがわからない

ただ、ひとつ分かるのは

愛する人を数年前に失った



「俺は、死なねえよ」

「なんでそんな馬鹿みたいな事、平気で私に言うの?」

「お前が死ぬ前には、絶対死なねえ。だからお前から見れば、俺は死んでねえだろ」

「屁理屈じゃない、みっともない」


花音は俺を決して踏み込ませてくれない

それは花音が俺を本当に拒んではいないようで、…でも現実では拒んでいて。

俺は花音を諦められなくて。

「みっともなくて構わねえ、お前を手に入れる事が出来るならな」

「あなたは、私をかわいそうだと思っているだけ。その気持ちは恋じゃないよ、部下思いの隊長さん」


そうやっていつも俺の思いを流そうとするんだ。それに、その手にはもううんざりだ


「俺は、お前があいつと付き合う前からずっと好きだった」

「だからなんでそういう事言うの!」


花音は初めて俺に声を荒げた


「あなたが…、隊長が、そういうこと言うから私はわからなくなるの」


とっくのとうに定時を過ぎた執務室には俺と花音の二人しかおらず、花音の小さな呟きもはっきりと聞こえる


「あの人を愛していたのが嘘になるみたいじゃない」

「そんな事ねえだろ」


花音の表情はよく見えないが、次の瞬間、俺の目を見てとんでもない事を言い出した


「あなたの事がずっと好きだったから」

「は…?」


俺はあまりにも衝撃的過ぎて、ただ驚くことしか出来なかった


「だから、ずっと罰なんだと思ってた。あの人と付き合いながらもあなたに恋をし続けた私に」

「………」

「私の気持ちがあの人に全て傾いた途端、いなくなってしまったの」

「…………」

「私はあの人に辛い思いしかさせてなくて、これからは一緒に幸せにって思ってたのに」


俺は花音の瞳から一粒の涙が流れたのを見逃さなかった


「今度はあなたが死んじゃうんじゃないかってずっと怖くて、拒んできた」


花音に近づき涙を拭うと、花音は俺の首に腕を回した


「俺は、あいつに憎まれても呪われても構わねえ、絶対死なねえ」

「……私を救って、"冬獅郎"」




この罰は死後にとっておく



だから、今は花音と平穏な幸せを築かせてくれと信じてもいないが神様とやらに頼んだ




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -