虹架かる世界

君が笑った。
世界が一瞬にして色鮮やかになった。
君が泣いた。
世界が一瞬にして曇ってしまった。
君が愛した。
世界は、...





「私じゃ、だめかな」


だめな訳じゃない。花音の色鮮やかな世界を守り抜く自信がなかった。


「冬獅郎は私の事、嫌いなのかな」


嫌いな訳じゃない。花音を幸せにする自信がなかった。
世界を守りたい。花音の世界を。花音の鮮やかな世界を。
俺はきっと、それは出来ないから。


「だったら、私を置いていかないで...」


一緒にいたら、花音の世界までも凍らせてしまうから。だから、逃げてくれ。俺の手の届かないところまで、遠くへ、遠くへ。


「戻ってくる、絶対に。だから、今だけは俺と離れてくれ」


強くなるから、今のままだと花音も、花音の素敵な世界も守れないから、だから、俺を待っていてくれ。強くなって、絶対に守るから。

花音の世界は曇った。雨も降った。


「虹を見よう」

「...え?」


雨の後には虹が出る。
花音がまた、笑えた時は一緒に虹を見よう。花音の鮮やかな世界の虹を。今は泣かせてしまっているけど、絶対また笑わせるから。その時に出た虹を、一緒に見よう。


「...待ってていいの?」

「ああ、絶対迎えに行く」


だから、その素敵な世界を守っていてくれ。
その真っ直ぐな心で。
俺の愛する花音のままで。
俺がどんなに穢れてしまっても。

守り通せる、貫き通せる力を手に入れたら、今度は愛すから。


君が笑った。
なのに世界は曇ったまま。世界の雨は止まない。
君が泣いた。
世界は変わらない。

君が愛した。
世界には虹が架った。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -