春の気まぐれ
外に出ると、春の匂いがした
ふと、横を見ると日番谷くんが歩いていた
ちょっと、いやかなりにやけた
今日は良いことあるかも
きっと日番谷くんは私を知らない
知っていたらかなりの奇跡
だって担任の先生ですら私をたまに欠席扱いして、学期末にわざわざ訂正しに行かなくていけないくらい影の薄い私。
…毎年無遅刻無欠席なのに。
そろそろ覚えろやなんて、口が裂けても言えない
なんてたって、私はそれくらい影が薄いから。それに面と向かって言う勇気すらない
でもそんな私でも一人前に日番谷くんに恋をしてしまったわけで…
とりあえず、一日一回拝めると超ラッキー!みたいな感じ
そんな日番谷くんを朝っぱらから見れたんだから、今日はなんかすごく良い日になるかもしれない
「……うそ…」
いきなり事件は起きた
クラス発表の名簿に日番谷くんの名前が。
そして同じクラスには私。
まさか、同じクラスになるなんて…。あ、大変、鼻血が。 鼻を抑えながら何度も確認した、何度も。やっぱり日番谷くんは私と同じクラスだった
万年ツイてない私に、ついにクラス替えの神は微笑んでくれたらしい。…好きです、クラス替えの神。
「……よし、これで全員か…」
恒例の担任の先生が出席確認で、私を呼び忘れるパターンきましたよ、はい
もう慣れっこなので澄まし顔でそのまま座っていると、
「せんせー、日向花音呼ばれてませーん」
なんと、この小さな事故を初めて指摘する人が現れた
隣の男の子が手を挙げて先生に伝えると
「あ、本当だ、悪かったな日向」
「…………い、いえ…」
無事、私の失っていた出席は回復した
朝のHRが終わり、さっきの事について感謝の言葉を伝えなければと、なけなしの勇気を振り絞って隣を向くと…
「へっ?!?!?!」
私は生まれてこの方こんなボリュームの声を出した事がない
それもそのはず、だって隣にいたのは日番谷くんだったのだから。
そして、私の名前を知っていたという衝撃の事実
「……は?なんだ?」
「い、いえ!あ、あの…さっきは……「ああ、気にすんな」
あまりの興奮で、上手く話せない
でも日番谷くんはそんなの知ってか知らずか私に近寄ってくる
……え、ちょ、近くないっすか、これじゃあ、キ、キスしちゃ…
「……鼻血」
「えっ?!あ、本当だ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
なんでこんな時に鼻血がああああああ!日番谷くんに醜態を晒してしまった…死にたい、今日帰ったら即刻死のう。どうせ死んでもニュースにすらならない人間ですよ、私は。
「大丈夫か?保健室行くぞ」
「だ、だ、大丈夫!!ただの鼻血だし!!」
「…いや……なんかやべえぞ」
ぱっと下を向くと、手で鼻を覆っているにも関わらず制服に血がぼたぼたと流れていた
「よし、行くぞ」
日番谷くんはいきなり私の手を掴んで、歩いてすぐの保健室に連れて行った
日番谷くんに握られた手はとても温かく、…そして私の血がべっとりとついていた
保健室について早々、日番谷くんは私に脱いだブレザーを渡した
「その血まみれのブレザーじゃ教室戻れねえだろ、若干でかいとは思うがこれ着ておけ」
「なんかごめんなさい、本当に」
日番谷くんの肌につけている物までお貸しいただけるなんてもう…なんていうか失神しそう。
「なあ、知ってるか?ここから見える景色」
日番谷くんはそう言って、保健室の個室のカーテンをガラっとあけた
「うわあ!!……すごい綺麗」
カーテンを明けた窓の景色は一面の綺麗な桜
「…初めて笑った顔見た」
「えっ……」
「お前、可愛いのにもったいねえよ」
もう今日は何が起きているのか全くわからない、日番谷くんと今一緒に保健室にいて、窓の外が綺麗で…可愛いって言われて?いやいやいや、意味がわからない、なんで日番谷くんが………
「いつも俺の事、見てるだろ」
「えっ!?」
しかも、バレてたし。
「俺も見てたし、な」
「ちょっと待ってよ…、絶対おかしいよ、だって私…いや、むしろこれは夢??」
うん、これは夢、ならばこの夢は一生覚めないで欲しい……むしろ私死んでしまっいて、私の願いが現実っぽく…??ここはあの世?
なんて考えていると
「ばーか。入学した時から思ってた…他の奴とは違う、魅力がある」
日番谷くんと私の距離がだんだん縮まっていく、そして……私たちの距離は0になった
「初めて、か?」
私の唇をなぞって、にやっと妖しく笑う日番谷くん
「あ、当たり前じゃない!!」
この人は!!!なんなんだ!?
私、もしかして……
「遊びなんかじゃねえよ、本気だ」
「へっ?!」
なんだか頭がこんがらがっちゃう
それに…なんだか頬がとても熱いし、すごくドキドキする
「花音…好きだ、ずっと前から」
「私だって…大好き……」
もう、こんな奇跡一生ないでしょう
日番谷くんが本気だろうが本気じゃなかろうが関係ない、そんな気がした
だって、あの日番谷くんが私を見てくれるんだから。
…色んなジャンルの神様、私のためにありがとうございます
「…とゆー事はこっちも初めてか?」
「ちょっ!それはない!!無理!!誰か来ちゃったら困るし!」
「あと一時間は誰も来ねえよ、大丈夫だ、良くしてやるから……それに、痛かったら夢じゃねえってわかるだろ?」
「そんな心配じゃなくて!!」
春の気まぐれ
(おい、また鼻血…)(え?!あ!本当だ!)(てめえ俺のワイシャツに血つけやがったな)(……)
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