偽絶命志望者

暇、暇、暇。
毎日暇過ぎる。毎日同じ時間に学校に行って毎日同じ時間に帰ってきて、毎日同じ人と会って...
うわなにこれ生きてる意味あるの?
お父さんお母さんごめんなさい、私生きる意味見つけられません、なので今日死にます

「...やば......」

死んだ後に騒がれたら嫌だから遺書なるものを書こうと思ったんだけど、書くことがまるでない

いじめられてないし、精神的にも追い詰められてるわけでもない
取り留め嫌な事があるわけじゃないし...

え、死ぬ意味すらないんだけど

生きる意味もなくて、死ぬ意味もなければ、私はどうすればいいのだろう


「ってゆー話」

「へえ...」

ちょうど隣の席だった日番谷くんに聞いてみる
この人頭いいから、妥当な答えをもらえることを期待して。

「お前それ本気で言ってんのか?」

「え、新しいギャグでも披露したと思った?」

質問してんのに質問で返されるというハイレベルな事をされてしまった
そして更に質問で返す私。もしかして今だけ彼と対等?

「いや、思ってねえけど」

真面目に返され、一気に形勢不利に。
突っ込むのを忘れるくらいナチュラルに言われてしまった

一回の会話で6文節以上話さない日番谷くんと会話するのは難しい事がわかった
やっぱり頭いい人は違うね、だって無駄に言葉を繋げようとしないもん
私なんて無駄に言葉を繋げようとし過ぎて自爆するくらいだもん
日番谷くんは低燃費なのね

「...死んだ後、どうなると思うんだ」

まさかの私に対するクエスチョンが来た
しかも日番谷くんらしからぬ、仮定の話
これは挑戦状と取ってもいいのだろうか

「うーん、天使が私を天国へ連れて行って...私くらいの人間だったらせいぜい来世はムラサキツユクサくらいかしら」

そう私の思いの丈を伝えると、日番谷くんは鼻で笑った
これが嘲笑というのだろうか、勉強になりました

「死んだって同じだ、大して変わらねえよ」

「日番谷くんって何度か死んでるの?だから頭いいの?」

「お前って、うっぜえな」

「うわー、傷ついたわー、死ぬ理由出来たわ」

その事についてちょっとばかし踏み込んでやろうかなんて思っていると、日番谷くんは持っていた携帯をパタンと閉じて立ち上がった

「俺は、死後の世界よりもこっちの世界の方がずっとマシだと思うがな」

「...日番谷くんってほんっと不思議だね」

私の言葉を聞いているのかはわからないけど、私をちらっと見て席から立ち上がった

「そんなつまらねえ事を言ってるうちは生きろ」

そしてそそくさと日番谷くんは教室から出て行ってしまう。取り残された私は不思議と気分が少し晴れていた。

日番谷くんの言ってるようにしてみようかな、秀才の日番谷くんの言っている事は正しいだろうし。頭の良い人の言っている事には大人しく従っておこう。うん、そうしよう


「おい、」


そんなに時間も経っていないのに帰ってきた秀才くん。突然呼ばれたかと思いきや、手にもっていた牛乳を私に向かってぶん投げてきた。


「ちょ、なんすかいきなり」

「カルシウム。お前頭悪そうだからな」


いきなり蔑まされて動揺してしまった。でも多分私は頭が悪い。だからやっぱり言われた事は当たっている。しかしお前呼ばわりは少し不快感。

「ていうか、私は日向花音という名前があるのですが」

「だからなんだよ、呼べってか」

「だって私、君と仲良くなるために生きてみようという明確な目標が出来たし」

言った瞬間、「んな事知るか」と即却下されたのかと思ったのだけど深い溜息をついた後


「お前がいつ死ぬのか楽しみになってきたな、花音」

「え、散々生きろって言ったのになんなの」

「こっちの話」

やっぱりわかんない、この人は。
でも、私は誰かに言ってもらいたかっただけなのかもしれない。生きろと。


偽絶命志望者


死ぬつもりなんか更々ない、ただ君と話をしたかっただけ。




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