猟奇的殺人犯


「花音、俺だけの物になってくれ」


彼は人生で初めて、他人に想いを伝えた


「…うれしい、喜んで」


彼が恋い焦がれた女は、頬を少し赤らめて微笑んだ



「俺だけの…花音」



…その薄笑いは、端から見ればかなり猟奇的なものに見えた事に違いない




彼、こと日番谷冬獅郎はとても花音を愛した

花音はそれを痛いほど感じていた

だから、花音も彼を深く愛した
いや、愛さなければ彼と付き合っていくことが出来なかった




「なあ、…花音」

「どうしたの?」


彼は、深く悲しそうな顔をした

その表情は、絶対仕事では見せない
花音だけに見せる表情



「…花音の全てに触れられるのに、…声は目に見えねえ」

「…………うん、そっか…」


彼は嫉妬していた

自分以外の者に響き渡る花音の声に、
その声に振り向く者が許せなかった

その声を自分の物だけにしたい

花音の全てを自分の手中に収めたかった



「俺の物じゃねえ気がするんだ」



花音は彼に優しく微笑んだ

彼は花音に近づき、花音の首に手を添えた



「…でも、こうしてこのまま力を入れると花音は死んじまう」

「うん、…そうだね」

「………花音…」



花音はもう諦めていたのかもしれない


彼だけの物になる


その意味を知ってしまったその日から



「こうして俺は花音に触れることが出来る、今花音は俺だけの物だ。…なのに声は、声だけは……」

「うん、うん…」

「俺はおかしいか?」

「そんな事ないよ」


彼は更に悲しそうな顔をした

彼はわかっている、自分が狂っている事に。

それを何も咎めず、ただ縦に首を振るだけの花音を愛しく思う半面、何か底知れぬ不安を少なからず抱いていた



「……花音は俺を甘やかし過ぎだ…」

「……………」

「お前は…何を考えている」

「………冬獅郎と同じこと、かな」


花音は彼に対して微笑みを絶やさない


「…言ってみろよ」

「私を、殺したいんでしょう?」


彼は花音をこの瞬間、恐ろしく思った。…目が笑っていないから、始めて彼女の真顔を見たから。


「冬獅郎は、誰が好き?」

「…お前だけに決まってるだろ?」


彼女は笑った


「嘘つき嘘吐き嘘まみれ」

「………っ」


嫌な予感がした、その予感はすぐに現実の物となって、


「流魂街、五番隊、ヒントだよ」

「……雛森に何をした」

「ふふ、雛森桃だけじゃない」

「…婆ちゃん」

「正解」


彼の心をずたずたに切り裂いた

花音はずっと笑っていた、それがすごく気味が悪い


「ちゃんとごみ箱に入れてきたよ」

「……っ!」



猟奇的殺人犯
(私がちゃんと捨てておいたの、あなたの大切な物ぜんぶ)



「これで安心して冬獅郎に殺してもらえるの」


本当は彼女が1番狂っていたのかもしれない

彼はようやく二人の狂った日常の異常性に気づいたが、それは既にもう遅かった




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