「指輪ってさ、なんですると思う?」
「ファッションだろ」
「違う違う、恋人 へのプレゼントのやつ!」
学校からの帰り道、自転車の後ろに乗った花音は俺にあの日、そう問いかけた。
花音はいつも俺に質問を投げかけたんだ。小さいことでも、何でも。俺の言葉をいつも待つんだ。
「意思表示だろ、手を出すなってな」
くだらねえ、と言うと花音は笑って、少し考えながら、
「ずっと一緒にいたい、とも取れるね」
と言ったんだ。
指輪なんてくだらないと思っていた。
そんな小っ恥ずかしい事なんかしたくないと思っていた。
そんなもの無くても、花音とやっていけると思っていた。
でも、違ったんだ。
花音に首輪をつけたいわけじゃない、花音を俺だけのものと周囲に意思表示したいわけじゃない、
ただ、ずっと一緒にいたい
そう花音の言ったように、俺は思えたんだ。俺のきっと変わる事のない、この気持ちを伝えたかった。
だからあの日、花音にプレゼントしたんだ。
「俺の気持ちだから、する必要ねえよ」
「受け取ったっていう事は、私も同じ気持ちなんだけど」
白い肌にとても綺麗に映えるその指輪は、花音だけの為に輝いているようだった。手をつなぐと、その指輪が触れて、何故かその感触が少しクセになってたんだ。
「だったら、ずっと冬獅郎と手繋いでいられるね」
きっと、これが幸せって言えるんじゃないかって思えたんだ。俺と花音を繋ぎ止めてくれるような気がしていた。
「...無くしたって言っても、何年も経ってるぞ」
「とりあえず、デートも兼ねて外に出て色々見てみよう?学校とか...いろいろ」
「そんなんでいいのかよ」
そう言うと、花音は「うん」と、俺の部屋を淡々と片付けながら頷いた。
「どこにあるか分からないから、思い出巡りでもしたらあるんじゃないかなあって」
「...そうか」
君はいつもそうやって、
嘘が下手くそなんだよなあ、と実感するんだ