少なくとも、私のせいだというのには変わりない。冬獅郎は午前中の授業はいなかった。お昼になっても現れず、結局午後の授業も欠席だった。
「いつも、こんな感じなの?」 「最近はあんまりなかったけど、入学した時もこうだったし、新学期は後輩が日番谷にアタックする子が多いから酷かったかも」 「そっか...、なんか、どうなんだろう、こういうの」
いくら付き合っていると言っても、好きな人に、異常に不自由を感じさせてしまうのは違うと思う。それに、冬獅郎がそこまで付き合う必要もあるのだろうか。
「花音、日番谷に魅力を感じるのは分からないわけじゃないけど...「幼馴染みだから」
そう、私と冬獅郎は幼馴染みだから。 だから、冬獅郎を気にしてしまうのはしょうがない。当時はお互い好きあっていたけど、それは過去の話。今はお互い別の人と付き合っている。
ようやく分かった、この冬獅郎に対する気持ちは、幼馴染みだから、なのだと。だから気になるのもしょうがない。
「幼馴染みなの、黙っててごめん。だから気になっちゃって」 「そうなの?じゃあ気になるよね」
恋じゃない。幼馴染みだという友情のようなもの。自分でも勘違いしてしまうところだった。...冬獅郎だって同じ気持ちに決まってる。
放課後、屋上へ向かった。冬獅郎はいないだろうけど、ほんの少しの期待を込めて。 冬獅郎が壊したという鍵のついた重いドアを開けると、冬獅郎はいた。正直、かなり驚いた。冬獅郎は一瞬こちらを見ると、また視線を元に戻した。
「...今日一日どこにいたの?」 「ここ」
返事は相変わらず素っ気ない。 でも、もう気にはならなかった。変な感情が無くなったから。私を拒否している訳ではない事が分かったから。
「...昨日は、ごめんね、私のせいで。」 「気にするな、俺がそうしたいと思ってした行動だ」
でも、そんな薄っぺらい言い訳の感情は一瞬にして消え去った。心が、恋にも似た感情の痛みを与えてくるから。
「彼女、いるんだね」 「...まあな」 「知らなくて、馴れ馴れしくしてごめ...「なんで花音が謝るんだ、何か悪い事したのか?」
冬獅郎は、初めて...いや、二度目の感情を私に現した。私は少し驚いた。あの冬獅郎が必死になっていたから。
「だって、冬獅郎が...」
"あまりにも冷たくするから"だなんて言えなかった。そんな理由分かってるから。彼女に見られたら大変だから。変に親しくして、私が冬獅郎に話し掛けに行くところを見られたら大変だから。
「もう話し掛けない方がいいのかな」
冬獅郎の為にも。 そう言うと、冬獅郎はあの寂しそうな顔をした。
「.........好きにしろ」
しばらくの間の後、冷たく私に向かってそう吐くと、冬獅郎は私の横を通り、屋上を出て行ってしまった。
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