愛しているからこそ、守りたい
愛しているからこそ、助けたい
愛しているからこそ、側にいたい
愛しているからこそ、分かりたい
ただ、この理由で私は偽善者を貫く。
そして、私を守るための正当な理由として。
これだけの理由が揃っていれば構わない。
隊長がもうあんな顔をしなくていいように、隊長がもうあんな想いをしなくていいようになんでもするから、だから、
もう、隊長は自分を赦して欲しい
「お前が俺を守るのか?」
「はい、守ります。隊長の心を」
そう言うと、隊長はふっと笑った。
「俺はそんなに弱く見えるか」
「ご自身が1番分かっていると思いますよ」
久しぶりに、自らの意思で隊長の瞳を見据える。吸い込まれそうになるその翡翠に、眩暈を感じた。それは私がまだ、この人の全て知ることをしていないと知らしめられたよう。
「...俺を、見抜こうとするな」
「どういう事ですか」
「さあな」
まるで、寄せ付けないようにしているかのように。私だけではなく、誰でも。だからこそ、隊長は私を求めたのだろうか。
私もまた、心の内を誰にも見せていないのだから。
本能的に引き寄せてしまったのだろうか。
それとも運命と呼ぶべきなのだろうか。
私が心の内を見せないのに、隊長の心の内ばかりを見ようとする事への言葉なのだろうか。
「お前は、...いつもそうだよな」
隊長は、視線をまた窓の外へ向ける。
「俺はお前が思っている程、難しい事は考えてねえよ」
隊長の事を、やっぱり私には理解出来ないのだろうか。頭の中は真っ白。何も分からなくて。
「私も隊長が思っている程、思い詰めていませんよ」
こう、返すのが精一杯。
隊長が私に気を使っている事くらいは分かるから。表面的な事だけは、こうして分かるのに。
隊長はまた、ふっと笑った。
そして、私をぐっと引き寄せる。
「花音、俺の事なんか何も分からなくて良い。ただ、想っていてくれ」
俺を守ろうとするならな、と付け加えて。
「隊長、...私だと足りないですか」
きっと困らすのだろうなんて分かり切っている事。でも、聞かずにはいられなかった。私の決意は固まってる。なのに、隊長の決意はどこへ行ってしまったのだろうか。
「愛に溺れると、何も見えなくなる」
押しては引いて、引いては押して。
私たちは一体何をしているのだろうか。
私たちは一体どうしたいのだろうか。
...私を中途半端に愛して、何を成そうとしているのだろうか。あの人を忘れられない、だなんて思い、愛をことごとく遠ざけて何を私に望むのだろう。