「ああー、すごいなやっぱり」

こんな状況でも他人事のようにしか思えない私。
迫力満点、拍手物ですわ。だって、こんな事現実に起こっているなんて考えられないでしょう。ですがまさしくこれぞ日番谷無双。素敵です。


「お疲れ様っす、日番谷先輩」

「......お前さ、「そろそろお前ってのやめましょうよ、花音って呼んで」


ついに言っちゃった、てへ
そろそろ呼んでほしいっすわ。だって...ねえ?せっかくこうして何かの拍子に会えちゃったんだしさ!
しかし冬獅郎くんは、私の下心が分かっているのか大層面倒くさそうな顔をして一言、


「...日向」

「え?あ?なに?君、私の名前間違ってない?ちょうど今紹介したよね?ん?ほら言ってみなされ」

「そろそろ殺すぞてめえ」


往生際が悪いこと悪いこと。まあそれはどっちなんだって感じなんですけどね。でも、私は決めたんだ、冬獅郎くんに絶対呼ばせてやる、と。甘いボイスで「花音...」と呼ぶ日をどんだけ待ち望んでいたか。


「...それはともかく、任務も完了した事だし俺は帰る」

「はあ?!ちょっ!待ってよ!うち半壊してるし!!...冬獅郎くんの家で同棲出来るなら全然あんな薄汚い家...「ああそれは大丈夫だ、お前の記憶が無くなっている頃には全て元通りになってる」


いやいやいやいや、私が言いたいのはそんな事ではないのだよ。いや、半分そういうことでもあったのだけど。ちょっとぐらいは、寂しそうな顔をしてくれたっていいではないか。なんなの逆にちょっと嬉しいみたいな感じ。


「私は寂しいよ、冬獅郎くんとまた離れ離れになるなんて...」

「そうか。俺は全くそんな気持ちにはならねえがな。昨日初めて会ったし。」


...確かに。私を護ったのだって、仕事だからだよね、うんそう考えるとやっぱり悲しいな。だがしかしね、こんな事で引き下がる私ではないぜ。


「で、でもさ、こうやって私と貴方が出会えた事自体、運命のいたずらだと思わない?」

「いや、全然。一瞬すらねえな」

「そろそろさ、本当の気持ちに正直になろうよ。私しか聞いてないからさ」

「......。はっきり言う、俺はお前に引いている」


やっぱりそうきた。私は次どんな手で冬獅郎くんの心を揺さぶってやろうかと考えること数秒、


「おい、...こっちこい」

「え、更に近づいていいの?やっほーい」

「やっぱりあまり近づくな。......もう時間だ、記憶を消す」

「.........消さなくていいっていう選択肢はないですよね」


気付いてはいたけど、やはりそうなるらしい。冬獅郎くんは、何も答えない。ということは、そういうことだということみたいで。


「毎回こういうことしてるの?」

「人間に見られることはかなり稀だ」

「...私とは初めて会ったって言ってたけど、それは本当に初めて...「あ?当たり前だろ俺がわざわざ面倒くせえ演技すると思うか」


...感傷にすら浸らせてくれないのか、この男。正直過ぎるぞ、でも許すぞかっこ良いから。でもさ以前会った事あるぜ、の方が絶対良い展開じゃん。なのに完全に先方は私を無知と仰るのです。


「...まあ、せっかくだから...、10秒以内で終わる事なら聞いてやらんでもない」

「本当...?!じゃあ...「ちなみに脱がねえからな」


...クソ、分かってやがる。私の下心を。
それでも私に欲望を叶えるチャンスを与えてくれるなんて神過ぎる。優しいだろ...お前さん...っ!!


「じゃあ、...えっと......、先程も申したのですが、花音と優しく囁いて、......キスが無理ならせめて抱き締めてくだせえ!」


恐る恐る冬獅郎くんを見ると、......かなりドン引きしていた。まあこんなの想定の範囲なのだけどね、ぐふふ。だって最初で最後のお願いならばこれぐらい大胆に言わないと!どうせ断わられるのなんて目に見え...「花音、ほら早くしろ」

「えええええええええ?!?!?!」


気がつくと、私は冬獅郎くんにがっつり抱きしめられていた。囁いてはくれなかったが...やべえ、いい匂いする...、やべえ、死後の世界の人なのに何故か温かい、やべえ、なんか、なんか、...言葉に出来ないけどやばい!!!!だって二次元だと思っていた人に!人にいいい!!


「......元気でな」

「えっ......」


目の前が真っ白になった。最後に見たのは、一瞬冬獅郎くんが、ほんの少しだけ口角が上がった麗しきお顔でした。








「あれ?なんかすごい疲れた気がする」


疲れる事なんて何もないはずなのに。だって寝て起きてる生活しかしてないはずだもの。
あれかな、夢小説の読み過ぎかな。読み過ぎて肩凝ってるのかね。
...それにしても、以前より冬獅郎くんを見ると興奮するな...うーん、気のせいかな。まあ私が日番谷冬獅郎氏を思う気持ちに偽りはないからね。うふ。






妄想と現実の狭間で生きてるんだ!



「...やば、超イケメンじゃないっすかあ...。あーあ、会えないかな」


よし、今日も一日、二次創作品を漁りまくるぞー!!









「隊長ー!もう帰ってきちゃったんですか。どうでした?久々の現世は」

「うるせえぞ松本。お前のせいで散々な目にあっちまった」

「でも、なんか楽しそうですね」




「.........ああ、あいつがこっちに来るのが楽しみだ」








ほんの少しだけ窓が開いていた

「冬獅郎くんが来たのかなー、なんつって。閉め忘れたんだわ、やだやだ私ったら」

何となく懐かしさを感じながらもその窓を閉じた





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