朝起きると、冬獅郎くんはいなかった
隊長羽織りも刀も無くなっていた
こんな事なら、力づくでも脱がせれば良かった。土下座でもなんでもして、せめて上半身の裸体だけでも拝ませていただければよかった。失敗こいた。こんなチャンスもう一生ないだろう。はあ、変な茶番で終わらせてしまった自分に失望する。


「うあああん、やらかした...くそう...」


せめて、棒読みでもいいから「もう我慢出来ねえ、抱かせろ」くらい言ってもらえば良かった。間接的でもいいからキスしたかった。はあ...ここ一番でチャンスをものに出来ない女日向花音とは私の事なんだぜこんちくしょー


「しょうがない、夢小説でも読んでこの鬱憤を晴らさせていただきましょうかね」


夢小説の読み過ぎだったのだろうか、もはや冬獅郎くんが私の目の前に現れたなんて幻想だったのではないか。なんかそんな気がしてきた。小学生の時とか「なんで1人で笑ってるの?」と良く隣の男子に言われていたもの、うん、その兆候、無きにしも非ず。


「なんで1人で笑ってんだ」

「いや、今は完全にドリーミングモードでして...ええええええ?!」


奇跡再び。
冬獅郎くんは現れた。窓から。お決まりの若干空いてる窓から。


「色々考えてはみたんだが、お前のような奴はやはり特殊の部類だ、霊感が異様に強いのか」

「そんな事よりお風呂入っていかない?」

「なんでそうなるんだよ」


んなこたあどうでもいいんだよ、私には下心しかないんだよ。霊感とか知らねえよ、たまに金縛りにあう位だよ、たまに見てはいけない物見てしまうくらいだよ。私はそんな事よりも目の前に君に痴情しか湧かないね、そこにおいては声を大にして言いたい、私はある意味特殊であると。


「いや、そんな警戒しなくても大丈夫だから。覗かないし、カメラとか置いてないし、我慢するし」

「全部やる気じゃねえかよ」


...くそう、どうやったら冬獅郎くんを脱がす事が出来るんだ...。見たい、この目で見たいぞ私は。シャワー浴びて、「次、入れよ」とか言ってくれる君を見たいんだぞ、アイウォンチュー。


「...本当は見た事あるだろ?」

「え...?冬獅郎くんが脱いだとこ?」

「...............大虚だ」


間違って下心丸出しにしてしまった
しかしそれはともかく大虚なんて見るわけないだろ、そんなのいるのはBLEACHだけなんだよ。アホか。まあしょうがなか、だってもともと冬獅郎くんは...「ちっ、もう気付きやがったか」

「............うわあ...マジだ...」


アホは私でしたすみませんでした本当にいましたこちら右斜め下の方向に大虚様です、ええ、お元気そうですね。私を食うなり煮るなりする気満々なのでしょうか。こちらを見ています。ええ、見ています。穴が空きそうな程に。あ、空いてるのは君の胸の方か、へへっ。


「そこから動くなよ」

「言われなくともそうしますよ」


冬獅郎くんは私の返事を聞くか聞かないか絶妙なタイミングで、一瞬にして大虚の前に移動して始解もせず倒してしまった


「霜天に坐ーせ!霜天に坐ーせ!」

「...なんだよそれ」

「霜天に坐せコール。霜天に坐してよー、見たいよー、氷輪丸さん見たいよー」

「必要のない時は使わねえんだよ」


妥当。でもせっかくなんだもん、見たい。
そこそこ粘ったものの、やっぱり冬獅郎くんは氷輪丸を見せてくれる事はなかった。が、しかし幸か不幸か私は否が応でも見る事になるだろう。だって外をを見ると空から絶賛大虚さん大量生産中だったから。


「うわ、何あれグロテスクなんですけど」

「お前が呼び込む体質なんだよ」


衝撃だけど、もうあんまり衝撃じゃないや、だって某BLEACHではありがちと言えばありがちな展開だったから。一番衝撃なのはね、なんと言っても、

私の目の前で、うちの自家用車がいとも簡単に破壊された事ですよねさすがに命の危険感じます


「掴まってろよ、一旦移動する」

「うわあ!ちょ、待って!私の部屋壊されるとかまじないんだけど、命の次に大切な鰤グッズ達があ...」

「命の次だろ?じゃあしょうがねえな。あそこにいたら確実にお前死んでた」


気が付くと、私はちっこい冬獅郎くんに担がれていた。ウホ...良いケツしてますね、やっぱり鍛えてる人のケツって違うよね、うん。
じゃなくて、確実に非現実世界に旅行している気分です日向花音です。人生で初めて命狙われてます。こんなちんけな命狙われてます。


「ここで待ってろ」


でも、なんだかこんなよくわかんないちんけな命を、どうやら気品高い彼の命をかけて護ってくれるようです




あの刀を持っている手がエロい





そんな命懸けの戦いを目の前にしても、こんな事しか考えることができない私の命を救う意味などあるのでしょうか。でも、私はゆとり世代の賜物なので与えられるものには甘んじて与えられ続けようと思います。要は、大人しく護られてみます。

でもやはり、目が行くのは彼の様々なチラリズム。





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