「あ、名前。悪いんだけどゾロを呼んできてくれない?きっとまだ筋トレしてるだろうから」
ナミにそう言われて、私は今展望室に向かう梯子を登っている。
サウザンドサニー号は展望室兼ジムになっていて、大体はゾロはそこに居るらしい。
ひょこっ
「……寝てる」
展望室に着いて、ひょいと顔を出せば、鼻ちょうちんを出しながら寝ているゾロ。
…この船の人達って…いや、もういいや。
よいしょと部屋に上がってゾロの元へ歩く。
「ゾローもうすぐ夜ご飯出来るってー」
「がーがー」
「来ないとルフィがゾロの分まで食べちゃうってー」
「がーがー」
「………」
駄目だ…起きない。
…どうしようかなあ。
ふと視線をズラせば、大きな重りに棒がついた物が目に入った。
「でかっ」
なんだこれ、デカすぎだ。
重りの部分は…昨日釣った魚の…尻尾くらい?
ああーなるほど、この棒を持って刀みたいにして…ってオイ。
ゾロは何になりたいんだ。
部屋をうろうろと歩き回って次はダンベルの前に立つ。
さっきのと同じ大きさの重りが両側に付いてるから二倍の重さかあ…ていうか重りが大きいから持つ部分が私の目の高さだよ。
「お前にはそりゃ持てねえぞ」
「ゾロ、」
すると後ろから声がかかって、振り返ればゾロが欠伸をしながら此方を見ていた。
「ん、見てただけ。私には持ち上げるっていうより、ぶら下がるって大きさだよ」
「……そうか、そうだな。名前、お前これに乗れ」
「…?」
「最近重さが足りねえとこだったんだよ」
「……これで、足りない…」
丸い大きな重りを見て、そう呟いた。
そして乗れと言われたから、持つ部分を掴み体を持っていって重りの上に座る。
座れる重りってなんだ。
ゾロがダンベルを掴んで上げ下げし始める。
おぉ、と見ていると、ゾロも私を見てきた。
「おい、全然変わんねーよ。重くなれ」
無理だー。
がしゃんがしゃんとトレーニングするゾロに構わず、重りから移動して持つ部分にぐでーっとお腹を下にして遊ぶ。
「うげー」
「何やってんだお前」
ぐるりーん
そこで一回転とかもしてみていると、下からルフィの声が聞こえてきた。
「おーいゾロ、名前!飯出来たぞー!」
まさかのまさかでルフィが呼びに来た。
他の人の分まで食べるルフィが呼びに来た。
そう思ったのはゾロも同じみたいで眉を寄せていた。
するとびよーんとゴムゴムなルフィの手が伸びてきて、勢い良く部屋に入ってきた。
「飯…って何やってんだ?おっもしれー!」
「ぐうっ…!」
ダンベルを上げたままのゾロと、そのダンベルにだらりと体を預ける私を見たルフィは、楽しそうに飛んできて私と同じようにダンベルに乗った。
重さが増えたのかゾロは呻き声を上げた。
「飯だぞ飯ー食わねえのか?」
「食べるー、ゾローご飯出来たってー」
「はっ…!い、いいじゃねえか…こんくらい楽勝だ…!」
「…まだ食べないってー」
燃えてしまったのか一人で口元を上げるゾロ。
ルフィはぐるぐると遊び始めた。
―すると次はフランキー声が姿を現した。
「おめーら何してんだァ?」
「お、フランキー!お前もこっち来いよ!」
「ちょ、ま、テメエは無理だ…!」
「スーパー…!」
「がっ…!」
笑うルフィ。
笑うフランキー。
汗をだらだら流すゾロ。
だらんとする私。
――数分後、ナミの怒鳴り声が響いた。
(お腹空いた…)
101113.