蜃気楼をつかまえろ | ナノ
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――次の日の夕暮れ過ぎ。

私は静かに起き上がり、ベッドからそうっと足を下ろした。
点滴をからからと押しながら船内を歩いていく。

向かうは、オヤジの部屋。


「おう名前」
「おれ達これから飯だが、一緒に行くか?」
「ううん、また今度」
「そっか、転ぶなよ!」
「んー」


オヤジの部屋に向かう中、食堂に向かう船員たちと多くすれ違った。

オヤジの部屋の前に立ち、大きなドアをノックする。


「――誰だ」
「名前、です」
「…ジョズ、開けてやれ」


ドアが開いて、前に居るジョズにお礼を言う。
部屋の中にはオヤジ以外にマルコ達隊長や、ナースさん達も居て、私はたくさんの驚きの入った視線を感じた。


「どうした、名前」


両側に並ぶ隊長たち、オヤジ横に居るナースたち。
そして私を真っ直ぐに見てくるオヤジ。

――私は静かに、頭を下げた。



「私も、戦争に連れていってください」



瞬間、ざわりとどよめきが起こった。
更に視線が濃くなる。

私はゆっくりと頭を上げ、オヤジを見上げた。


「私もエースを、助けたいんです」


見つめる。真っ直ぐに。


「お前は次の島で下ろすと言った。…仲間に早く会いたくねえのか?」


キツくなるオヤジの瞳。


「……私の船長は…エースの弟なんだ」
「「「!」」」
「私の仲間がもし私の立場だったなら、絶対に同じことをする。――エースを助ける」


自分の能力を過信なんて、していない。
戦争なんだ、たくさん能力者は居る。


「私はまだまだ弱いから、ずっと作用してることなんて出来ない。戦争で、自分が何を出来るかなんて分からない。―…けど、それでも私は、エースを助けたい…!」


勝算なんて無くても、
ボロボロになっても、
――諦めない。


「仲間は私に、大切な人を…仲間を守り抜くことを、教えてくれたから」


―…だから、みんな。


「……良いのかァ?死ぬかもしれねえぞ」
「…流れ弾には気をつけるよ。それに…海軍側は私の顔を知ってる、私を欲しがってる。…私は殺されない」
「………」


少しだけ…少しだけ、みんなの元へ帰るのは遅れるかもしれない。


「それに…私には仲間が居るんだ。とても大切な…。――だから、死んでなんていられないよ」


でもね…絶対―――



「仲間の元へ帰らなきゃ」



――ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルック。

絶対…みんなの所に帰るから。
少しだけ、寄り道するね。




110126.