「はあ…っ、はあっ…!」
「………」
「っ、名前…!」
辺りに爆風が吹き荒れた。
爆発が起こった中心地に居た筈の私は、何故か離れた所からその場所を、口から黒煙を出しながら故障したパシフィスタを見ていた。
後ろからする荒い息。
私の名前を呼ぶ声。
振り返らなくても分かる。
爆発の光に包まれる直前にお腹に回った腕で、分かってた。
「―――……ルフィ…」
名前を呼べば、ぐるりと体を回されルフィに正面から抱き締められた。
ぎゅうぎゅうと痛いくらいに抱き締められる。
ルフィの肩越しに、力が抜けたように地に膝をついたロビンと、涙を流すチョッパーが見えた。
「っ、何…考えてんだ!」
びくり、
ルフィに怒鳴られて肩が揺れた。
ルフィは抱き締めていた手を離すと肩に置いて、真っ直ぐに見つめてくる。
眉を寄せてて、つり上がってて、怒ってる。
……何を…考えて…?
私は…私は…――
「……なにも…考えてなかった」
「っ?」
「ただ…ただこのままだったら、皆が…死んじゃう、って思って…」
「〜っ、名前はどうなるんだよ!あのまま居たら…っ死んでたんだぞ!!」
――軽く、目を見開いた。
そんな私に、ルフィはまた背中に手を回して私を抱きしめる。
私…そっか、私…自分のこと、考えてなかった…。
そっか…そうだよね、あのままあそこに居たら、私…死んでた。
「…あはは…」
「…なに笑ってんだよ」
「ん…?いや、私…馬鹿だなあって思って…。死んじゃったら…皆に会えないんだよね…。ルフィが助けてくれたおかげだよ。…ごめんね」
そして、私も手をルフィの背中に回してぎゅうっと抱き締めた。
ふにゃり、
「ありがとう…――」
するともっと力が強くなった。
次の瞬間、
「っ、サンジ!!」
というルフィの声と共に、私はルフィに投げられた。
訳が分からないでいると、鉞を持った男がルフィの後ろに居た。
「足空独行!!!」
その男が繰り出した突っ張りを避けたルフィが見えて、私を安全な方へ送って(投げ飛ばして)くれたんだと分かった。
―――ガシッ!
すると誰かに抱き留められた。
香る煙草の匂い。
「……サンジ、あり…」
「っ馬鹿野郎…!!」
「ええ…」
ま…また怒られた。
「もう二度と、あんなことすんじゃねェっ!クソ名前が…!!」
………わ、初めて『クソ何だか』って言われた。
クソゴム、クソマリモ。
思わず笑うとがしりと強く頭を掴まれて、そのままぐしゃぐしゃと撫で回された。
「ったくよォ!名前のバカやろーっ!お前は馬鹿だ!バカやろーっ!」
「…そんなにバカバカ言わなくても」
「いいや、馬鹿です!名前さんは馬鹿です!」
「………」
するとウソップとブルックが来てバカバカ言われる。
ウソップは終いには「お前はバカバカの実だ!」とか言い出した。
から、チョップした。
―――ガシリ、
「…ば、か野郎……!」
すると足首を掴まれて、見たらゾロが起き上がれないながらも必死に私の足首を掴んでいて、なんだか…ゾンビみたいだ。
「って、お前こわ!無理してんじゃねェよ!」
「ウソップの言う通りだよゾロ。…ゾンビみたい」
「バ、カ…野郎…!」
「……とりあえず、走って逃げよ。ウソップ、ゾロンビのこと担げる?」
「おう!ゾロンビはこのウソップ様に任せとけ!」
「ゾ…ロンビじゃ…ねえ」
そして私達は走り出した。
―――いや、走り出そうとした。
「おめェら!後ろだ!」
斜め前方を行くフランキーの声。
後ろを振り返って、
「本物のバーソロミュー・くま…!!」
ナミの声が聞こえた。
100104.