爆音が響き渡り、木々が倒れる音、建物が壊れる音がした。
皆が向かった方向から。
そして次いで、違うグローブの方の空に、眩しい一筋の光が空を突き刺した。
「!あれは…」
「…?」
「…大将が来たようだ。あれは…黄猿くんか。天竜人の問題関係無く暴れているようだな」
「皆の方の爆発は…」
「ふむ…よく分からんな。大将がルーキー達に一人以上でかかってくるのも無いだろうし…だからといってただの海兵の集まりでもないだろう」
―…大将がこの島に来た理由は、天竜人を傷付けられたから。
いま大将が誰を相手にしてるのかも、皆が戦ってるのが誰なのかも分からないけど…大将が優先して捕らえるべきなのは…
「レイリー、私…皆の所に行ってくる」
麦わら海賊団だ。
レイリーに見つめられるのを真っ直ぐに返す。
レイリーはふ、と少し笑った後、リュックを近くの木に寄り掛からせた。
「私も行こう」
「…え」
「ふふ、若い芽は摘んじゃいかんのだよ。さ、私の肩に掴まりなさい」
そうしてレイリーはしゃがみ、促すように私に背を向けた。
その背中に体を預けて、肩に手を置いた次の瞬間、
ドン!!!
と音がして、飛んでるように速いスピードで周りの景色が変わった。
風が吹き抜ける中で、レイリーに口を開く。
「レイリー…ありがとう」
「ふふ、構わんよ。私が好きですることだ。気にしなくて良い」
「…ん、」
速くなるスピードに、私はレイリーの肩をきゅ、と掴んだ。
ぐしゃりと戦闘の跡が残ったように開けた森を通る中、奥でさっきと同じ光が見えた。
「…!」
「やはりルフィ達を狙いに来たか…」
森を抜けると、皆の姿が少し遠くに見えた。
「!ゾロ…!」
ピカピカと光る根源は大将黄猿の足元からで、その足は倒れているゾロ目掛けて振り下ろされようとしている。
散り散りに居る皆が必死に叫んだり、黄猿に攻撃しているけど、攻撃は黄猿の体を傷付けることは出来ない。
「名前、黄猿くんは私に任せたまえ。大将を止めるとなったら名前にも負担が大きいだろう。君は仲間と共に此処から逃げるんだ」
ありがとう、と何度目か分からないお礼をまた言ったらレイリーは変わらず微笑んだ。
―――ドン!!!
黄猿が足を動かした直前、レイリーと私の体は一気に黄猿の元へと移動し、レイリーが黄猿の足を蹴り上げた。
ゾロに直撃しようとしていた蹴りの威力は上に向けられ空を突き抜けた。
ゾロから退いた黄猿の、茶色のレンズの向こうの瞳がゆらりと此方を向いた。
「――アンタが出る幕かぁい?…冥王、シルバーズ・レイリー…」
「ふふ…若い芽は摘んじゃいかんよ、黄猿くん。彼らはこれから始まるのだよ」
ため息をついて頭を掻いた黄猿の視界が、レイリーの背中から降りた私に向けられた。
「それにお嬢ちゃん…名字名前だねぇ?嫌だなぁ、困ったなぁ…。君に居られたらわっしらの立つ瀬が無いねぇ」
「ふふ、大丈夫だよ黄猿くん。この子の能力は君には使わない。君は…私一人で止めさせてもらうよ」
「……ふーう。恐いねぇ」
「さあ名前、行きなさい」
「ん、」
近くに呆然と立っていたウソップとブルックを見る。
「ウソップ、ブルック」
「…お、おおおおう!サ、サンキューおっさん!」
「あわわわわ!あああありがとうございましたーっ!」
ダッと走りざまに倒れたゾロを抱えて走り出すウソップの後をブルックと着いていく。
辺りを見回せば、斜め後ろの方向にナミとサンジとフランキー。
右の方向にルフィとチョッパーとロビン。
…みんな、ボロボロだ…。
「で、でも名前が今来て良かったぜ!」
「…?」
「さっき戦った奴はビーム出してきてよ!能力者な筈なんだけど双子だか何だか知らねえが能力者じゃなくてな!パシフィスタ…だったか?まあその時来てたら危なかっただろ?!」
「…ね、ウソップ」
「なんだァ?!」
「それって……あれ?」
後ろを振り返ると、まだ遠いけど明らかに私達に向かって走ってきている大きな人。
「「ぎゃー!!!」」
顎をがーん!と外した二人が異常にスピードを上げたのに着いていく。
―――キュイイイン、
すると機械音がして、振り向けば口を開いたその先に光が集まっている。
「や、やべえ!また来るぞ!」
ウソップの言葉を掻き消すように、パシフィスタはビームを発射させた。
100104.