「じゃあ皆…三日後にね」
「レイリーさん、名前のことをお願いします」
「いや、こちらこそすまない。話は長くはかからないが、だからといって途中で名前を一人君達の元に向かわせる訳にもいかないからな。大将には…会わないよう気をつけろ!はっはっは!」
「「いーやー!」」
高い声で叫ぶウソップとチョッパーに笑うレイリーさんは、私に視線を移すと
「それにしても……」
ぎゅううううっ
「ふふ、悪いな。ルフィ」
「……いや、大丈夫だ!」
私をぎゅうぎゅうに抱き締めているルフィに笑った。
「ルフィ、」
「……おう」
ルフィの背中の服をくい、と引っ張ればゆっくりと離れていく体。
名残惜しげにするりと指を取られた。
見上げれば、ぐぐっと眉を寄せている。
私は少し見つめて、そして背伸びしてルフィの首の後ろに手を回した。
「なっ…!」
がちん!と固まったルフィと、何故か色んな表情をした皆に首を傾げながらも、紐で繋がり背中にあった麦わら帽子をぽす、とルフィの頭に乗せた。
「よし…オッケーです」
「ふふ、じゃあ行こうか」
何がオッケーなのか自分でもよく分かんないけど…またね、皆。
「――ルフィ、ルフィ!」
「…っぷはあ!びっくりした!」
「さ、行きましょう!名前さんももう行かれましたよ」
「………」
「ん?どうしたんだい?ロビンちゃん」
「ああ、いえ…話とは何かしらと思ってね」
ぽわん、
またひとつシャボン玉が地面から浮き上がった。
少し荒れ果てて人の姿が見えない建物があちこちにある中をサニー号に向けて歩いていると、レイリーが口を開いた。
「名前、」
「…?」
「君の能力は、悪魔の実の能力者の能力の増大、減少、停止…だったかな」
「…最近、吸収もしたよ」
「!…そうか」
――なんとなく、何を聞かれるのか分かる。
何を言われるのか。
何を聞きたいのか。
「名前、私は君のことを聞いた時驚いたよ。――そんな悪魔の実は聞いたことが無かったからだ」
「………」
「勿論、私も全てを知ってる訳じゃないがね」
がしゃ、
レイリーが鞄を背負い直す音が響いた。
静かに、口を開く。
「…私、海に入っても泳げるんだ。海に浸かってても能力を使える。海軍とかは私を捕まえる時、念のために海楼石を使うんだけど効かないの」
デュバルの事件の時に、ケイミーとパッパグに引っ張られて海に飛び込んだ。
皆は焦って助けようとしてくれたけど、私は動かした手で陸を掴んだ。
――悪魔の実を食べた物は海に嫌われる。
海に入ったら、海楼石に触れたら力は出なくなる。
「…そうか」
「でも私は…能力を増大させたり拒絶させたり、停止させるから、カナヅチってことも拒絶出来るんだと思ってるよ」
「ふ…はっはっは!」
笑うレイリーはどこか安心した風にも見える。
…確かに悪魔の実を食べた記憶は無い。
けどもし私が能力者じゃないんなら、私は何なんだってことになる。
超能力者か。
わあ、かっこいい。
…なんてね。
「海楼石が君に効かないってことを海軍は知らないんだろう?」
「ん」
「そうか、その方が良い。…君に一番伝えておきたいことがまだだったな。名前、」
「…?」
足を止めたレイリーに、私も止まる。
見上げれば、縦に傷が入った目が優しく私を見ていた。
「もしこれから先新しい能力が増えたりしても、それを海軍に―…いや、政府に知られてはいけないよ」
ぽん、と頭に手が乗せられた。
そして言葉を紡ごうと口を開きかけた時、
――どがぁあああん!!!
爆音が響き渡った。
100104.