崩れた海軍の包囲網を抜けるのは簡単で、グローブを移る為の移動手段に来てくれた飛び魚ライダーズに助けてもらって、今は『ぼったくりバー』に向かって歩いているところ。
するとシャボン玉が浮きかう中、私の視界がブレた。
皆の背中が二重に見えて、ぐらりと平衡感覚が無くなる。
あ…やば…――
真っ直ぐに歩いている感覚が無くなって足元が覚束無い。
斜めに倒れていく視界の端に木が映って、私は力無くそれに手を伸ばした。
ごちん!
「……う…」
けど力の無い手は木を掴めなくて、ぐらりと倒れる体は頭がぶつかることで止まった。
しゅるしゅるとしゃがみこむ。
音に振り返った皆が驚きながら此方に来た。
「ちょっと名前?!どうしたの?!」
「け、怪我してるのか?!包帯ならいっぱいあるぞ!」
「ん…力、使いすぎただけだから…だいじょーぶ…」
「大丈夫じゃねェだろ!」
ルフィにスッと持ち上げられて、腕の中に収まる。
ぐらぐらと揺れていた脳が落ち着いて、うとうとと眠気が襲ってくる。
「ルフィ…ありがと…」
「おう。気にすんな」
「寝て…いい…?」
「にししっ、良いぞ」
笑ったルフィにもう一度ありがとうと呟いて、私はずぶりと眠りに引き込まれた。
「やっぱり船長格の能力者を三人も作用すると体力的に辛いんですね…」
「ええ。ユースタス・キャプテン・キッドにトラファルガー・ロー。二人共億越えね」
ブルックとロビンの言葉に麦わら海賊団全員が、ルフィの腕の中で吸い込まれるように深い眠りに着いた名前を見た。
そしてまた全員が次にルフィに視線を移して――
「「「………」」」
無言で見つめた。
視線に気付いたルフィはガクギクとまるでロボットが動くかのように歩きながら、皆を見回した。
「ん?なんだ?」
「おい麦わら、そのスーパーな歩き方はなんだよ」
「名前に負担がいかないようにだ!」
「いや、逆にぎこちなさすぎる」
ウソップにつっこまれてルフィはそうか?と普通の歩き方に戻した。
「ん…」
すると名前が少し身動ぎして、ルフィの胸板にこてりと頭をくっつけた。
「っ!」
ぶわりと顔を赤くしたルフィ。
ゾロが愉しそうに笑って口を開いた。
「俺が持ってやろうか?」
「っいや、大丈夫だ!」
「クソマリモなんかに任せられるか。俺でもいいぞ、ルフィ」
「だあーっ!大丈夫だ!」
「あんだと?ぐるぐるコック」
「ああ?」
「やんのか?」
ごちん!
そして結局ナミの拳で事態は収集し、ぼったくりバーに着いたのであった。
101230.