――がちゃり、
「…あれ…皆たこ焼き食べてる」
「おめェも貰ってきな。下で作ってるぜ」
冷えたということでお風呂にひょいっと投げ出されていて、今上がった。
ドアを開けると芝生甲板でたこ焼きを食べているゾロとロビンとフランキー。
フランキーの言葉に下を見ると屋形船のたこ焼き屋さんがあって、ハチとケイミー、パッパグが凄い速さでたこ焼きを作っていて、ルフィが凄い速さで食べている。
洗い終えたワイシャツを干して、下に降りようと手すりに乗ると
「名前、」
「……いいよ」
「あ」
ゾロが立ち上がったから、何となく嫌な予感がした私は勝手にひょいと飛び降りた。
たんっと軽く船に着地。
「おー名前!うめェぞこのたこ焼き!」
「はい、名前ちん!」
「ありがとー」
ケイミーが差し出すたこ焼きを貰おうとカウンターに向かう。
ふわりと風が吹いて髪が揺れた時、
―――がばっ
「…あー、良かった」
「…ルフィ…?」
「ん?いやー、ちゃんと名前の匂いだなって!」
「…?そっか」
よく分かんないぞ。
ぎゅうぎゅうと抱き着かれていたのを適当に抜け出して、少し離れた所に居るナミの隣に座った。
「あー…で、その…ナミはどうだ…?」
するとハチが恐る恐るといった風にナミに言葉を紡いだ。
ルフィ、ウソップ、サンジ、チョッパーの肩がびくりと揺れる。
―ナミは静かに、口を開いた。
「…これで全てが帳消しになるって訳じゃ、無いわよね?」
「にゅ!も、勿論だ!ただ俺は、たこ焼き、たこ焼きの味がどうかって…」
「…そう」
そしてたこ焼きをひとつ、口に入れて飲み込むと
「すっごく美味しい!」
明るく笑った。
「にゅ〜!そうかぁ!」
涙ながらにたこ焼きをぽんぽんと更にスピードアップさせて作っていくハチ。
ルフィ達がほっと息をついたのが見えた。
私はリュックから手配書を一枚取り出した。
「ね、ナミ」
「ん…?」
「この人さ、どうやってキスするのかな」
「「「ぶーっ!!!」」」
アーロンというナミの故郷を支配していた魚人の写真を見ながら言うと、何人かがむせた。
「知るかーっ!ていうか見たくもないわー!」
私から手配書を奪い取りびりびりに破って海に叩きつけたナミの目はまた三角で、私は少し笑って頭をぽんぽんと撫でた。
「…名前…(もしかして私のことを思ってわざと…)」
「キス…キスか…」
「だあっ?!おいテメ、ルフィ!はやまんな!とりあえずソースを拭いて…ってそうじゃねーっ!!」
でもホント、少しだけ気になるよねー。
だって鼻長いし、ギザギザだし…あ、ウソップはどうなんだろ。
「―――若旦那〜!!」
すると海の向こうから、聞き慣れたエンジン音と共に明るい声が聞こえてきた。
見ればそこには
「若旦那〜水臭いじゃないかあ。何も言わずに行ってしまうなんて」
「誰だお前?」
「嫌だな麦わらの旦那。オラだよ、デュバルだよう」
「「「ええ?!」」」
金髪黒目…それは変わらないけどハッキリとした二重、すらりと高い鼻筋、さっきと全然違う。
「骨格変えてやったんだ。もう文句つけられる筋合いはねーよ」
皆の驚愕の声に答えたサンジに、デュバルが何かを投げる。
「オラの電伝虫の番号だから何かあったら直ぐに電話してくれよな〜」
私は立ち上がってデュバルの方へと歩いていく。
「デュバル、」
「あ…!き、君は…!」
「あのね、貸してくれたワイシャツ今干してるから少し待って…」
「いや…良いよ」
「…?」
「君にあげる…!」
…私にあのワイシャツをどう着こなせと…?
「だからそのワイシャツ、オラだと思って…!」
ごつん!
「あー悪ィ」
デュバルの顔に後ろから伸びてきた拳が直撃した。
そしてその腕は戻る時に私のお腹に回ってそのまま戻る。
「ルフィ…デュバルの骨格また変わっちゃうんじゃ…」
「そしたらまたサンジがどーにかするだろ」
「俺かよ。…まあいいが」
背中に居るルフィを振り向き見上げながら言えばたこ焼きを口につっこまれた。熱い。
するとデュバルが顔を押さえながらルフィを見て
「まさか…嫉妬?!」
「…!」
「このオラの美貌に!」
「してねェよ」
――そうして結局、デュバル達は掛け声と共に去っていった。
「行くぞ!人生バラ色ライダーズ!」
「「「イエス、ハンサム!!」」」
「…イエス、はんさーむ」
「やめなさい」
101225.