「………」
「………」
「………」
「………」
ルフィの視線を感じる。
真っ直ぐに見られている。
そりゃそうだ。
胡座をかいたルフィの前に無理矢理座らされているから。
――ケイミーとパッパグに抱き着かれていたところをルフィに引き寄せられ、今の状態。
腕を組み唸りながら私を見るルフィは勿論、展望室から飛び降りたことを怒っているんだ。
いくら大丈夫だって言っても駄目で、私の脚力をなめんなーとか言ってみても駄目だった。
ていうか逆に頭叩かれた。
着々と飛び魚ライダーズのアジトへと向かっているサウザンドサニー号の船首で行われているこの一方的にらめっこ状態を、遠目に皆が見ている。
一回助けを求めようと皆の方を見てみたものの、フランキーが親指をグッと立てただけで終わった。
なんだよそれフランキーのばかやろー。
…って言いたかった。
でも何時までもこんな状態で居る訳にもいかないから、私は伏し目がちにルフィを見上げた。
「う…!」
…まさかルフィに『いい加減勘弁して下さいオーラ』…ていうかアイコンタクトが通じるとは。
目に見えて狼狽え始めたルフィに少し驚きながらも、効き目があるのを止める筈もなく私はじっとルフィを見つめた。
「う、あ、」
「………」
「ぐう…!」
「――あらあら、ルフィの負けね。ふふっ」
「凄ェな名前ー!おれルフィがあんなになってんの、って言ってもちょっと違う意味の焦りだけど、ナミが怒ってる時しか見たこと無」
ごちん!
「…ウソップぅ、何か言った?」
「い、言っでばぜん」
「(こ、怖ぇえーっ!)」
何故だか胸辺りの服を握り締めたり麦わら帽子を目一杯目下まで下げたりしながら苦しそうなルフィ。
…何を受け取ったんだ。
毒素なんて送ってないぞ。
なんだか悪いことでもしたような気持ちになって私は少し慌てながら、帽子を引っ張ってるルフィの腕をつんつんとつついた。
そして帽子から少しだけ目を覗かせ伺うように私を見るルフィに思わず笑った。
ふわり、
「じゃあ今度降りる時にはルフィに頼むね」
ルフィも私のことを心配してくれて怒ってくれてる訳だし…って言っても私の脚力がナメられてるからだ。
今度展望室から飛び降りて無事な様を見せれば納得してくれ…って、
「〜〜…、…!」
そこにはさっきよりも苦しんでいるルフィが居て、私は首を傾げた。
――飛び魚ライダーズのアジトに着いた。
海上に浮かぶ建物のような場所がそうで、攻撃が無ければまず人が一人も見えない中をサニー号は進んでいく。
「あ、ハッちん!」
「!ハチーっ!」
するとケイミーとパッパグが飛び跳ね手を振り始めた。
見てみるとそこには、海の上に吊るされた檻の中に居る……ケイミーの、友達?
「…ケイミーの友達って凄い日焼けだね」
「いや違うだろ」
真っ黒で顔のパーツも分からないケイミーの友達を見て言えばウソップにびしりとチョップされた。
するとナミが顎に手をやり眉を寄せ、目を細めながら唸った。
「んー…なんっか見覚えあるのよねぇ、あのシルエット」
渋い表情のナミやサンジ、ゾロやウソップに知り合いかと他の皆が首を傾げる。
―…話が進んでいくのを聞く限り、どうやらケイミーの友達さんはナミの故郷を支配していた一味の仲間だったらしい。
体が真っ黒なのは、面識のある麦わら海賊団に気付かれない為にみたい。
「そ、そんなぁ!じゃあハッちんを助けるのを手伝ってはくれないのね…?!」
それなら、と引き返し始めたサニー号にケイミーが涙を浮かべながら皆に聞く。
それに対してナミは額に手をやりため息をついた。
「ごめんねケイミー。まさかハッちんがアイツだとは…」
「っなら私一人でも助けるよ、ハッちん!ハッちんは何時でも私達を助けてくれたじゃない!」
「まさかおめェらがこんな薄情な奴らだとは思ってなかったぜ!行くぞ、ケイミー!」
そうしてケイミーとパッパグが手すりの方へと来た。
手すりに座っていた私はケイミーとパッパグを見る。
「あれ…もう行っちゃうの?」
「っ名前ちん!名前ちんは一緒に行ってくれるよね!」
「ん…?」
「やっぱおめェは流石だぜ!」
訳が分かってない内に左手をケイミーにつかまれた。
かと思えばケイミーとパッパグは勢い良く手すりから体を浮かせて
「「それっ!!!」」
海に飛び込んだ。
勿論、手をつかまれていた私も一緒に。
「「「名前!!」」」
皆の私の名を呼ぶ声は、水の音で聞こえなくなった。
101224.