ガチャン、ガチャン
ゾロが筋トレする音が辺りに響く。
逆立ちしながら大きなダンベルを足で上下するゾロは…何て言うか…何なんだろう。
その様子を静かに眺めながらミニマムダンベルで私も筋トレしていると、船が動き始めた。
「お…?」
「もう出航か?」
ユーダ海流を抜けてからログポースがさしたのは海の下。
シャークサブマージ3号でルフィとロビンとブルックが海底に向かっていった。
私も誘われたけど、シャークサブマージ3号は三人乗りだったから止めといた。
「って、オイ!」
「んー?」
「おま、危な、お、俺が降ろしてやるから待て!」
「…いや、大丈夫だよ」
「あ゛あ゛あ゛!!!」
窓から身を乗り出し芝生甲板に降りようとしていた私を見たゾロは、ダンベルを置きながら焦り始めた。
確かに少し高いけど、これくらいヘーキヘーキ。
そうしてひょいっと宙に身を投げ出せば、ゾロが叫びながら飛び出してきて引き寄せられた。
着地したゾロの腕の中で私はゾロを見やる。
「…大丈夫だって」
「ぜえっ…はあっ…!」
「……はい、タオル」
――すると視線を感じて、ふと見れば私達をじっと眉を寄せながら見ているルフィと
「……人魚…?」
「あ、ケイミーです!はじめまして!」
明るく笑ったケイミーと、此方に来るルフィ。
私はゾロから離れてケイミーの元へと歩き出す。
後ろではゾロとルフィが何やら言い合っていた。
「私は名前だよ」
「名前ちんかあ!」
…ケイミーちんって呼んだ方が良いのかな。
「おいゾロ!」
「あー騒ぐな!仕方なかったんだよ」
「…ヒトデ?」
「おう!パッパグだ、よろしくな!」
「なにィ?!展望室から飛び降りたァ?!」
「ああ。だから仕方なかったんだよ」
ヒトデって喋…いや、驚かないぞ。
チョッパーが居るんだ。
「おい名前!」
「……げ」
するとルフィに呼ばれて、振り向けば明らかに怒っているルフィ。
ゾロめ、と見やればゾロは既に我関せずと階段に座って水を飲んでいた。
ゾロのばかやろー。
ていうかそんなに私が展望室から飛び降りるのは駄目なのか。
どう逃げようかなーと考えながらじり…と足を後ろに下げた次の瞬間、遠い空からエンジン音が聞こえてきた。
「!なんだ?!」
皆が甲板に出てきて空を見やる。
その視線の先に見えてきたものは――
「あ、アイツら…飛び魚ライダーズ!!」
………飛び魚ってあんなに飛べるのか、新発見!
ていうか飛び魚ってあんなに大きかったっけ。
パッパグが声を上げた言葉に数人が眉を寄せ、数人が首を傾げ、数人が目を輝かせた。
その目を輝かせている中に(当たり前だけど)ルフィが居るのを見て私は小さくガッツポーズ。
説教は免れたぜ、なんて。
―――結局、飛び魚ライダーズは少し爆弾を落としていって何故か戻っていった。
そして麦わら海賊団は、飛び魚ライダーズに捕らえられてしまったらしいケイミーの友達の…たこ焼き?…違う、何だっけな…ハチ?ハッちん?……まあ、ケイミーの友達を助けに行く事になった。
すると海を眺めながら不安そうな表情のケイミーと、その隣で手すりに立っているパッパグが見えて、私は二人の方へと歩いていく。
「ケイミー、パッパグ」
「あ、名前ちん…」
「おう、名前」
「大丈夫だよ。…友達、きっと無事に助けられるよ」
「!名前ちん…」
ふにゃり、
「麦わら海賊団の皆は強いから、大丈夫。…ケイミーは笑顔の方が良いよ」
「っ名前ちん!!!」
「わ、」
「名前、おめえって奴はー!」
「お、」
タックルの勢いでケイミーに抱き着かれ、一緒に倒れたところにパッパグがぴょーんと飛びかかってきた。
犬の尻尾みたいにぶんぶんと振られてる尾びれが見える。
「―…名前ってたまに妙に男前なのよね…」
「ふふっ、素敵だと思ったことを素直に言うからかしらね」
「あ!名前に怒んの忘れてたぞ!」
(あ、そういえばケイミーの着てるTシャツのデザイン可愛いね)
(っ名前ちん!)
(おめえって奴はー!)
101224.