ナミとロビンとお茶を飲んでいる昼過ぎ、芝生甲板の手すりではルフィ、ウソップ、チョッパー、ブルックの四人が座り釣りをしている。
麦わら海賊団が次に向かう島は魚人島。
ログポースのさすままに進んでいる途中だ。
「おい名前ーまたデッケェ魚釣ってくれよー」
「眠くなってきたなー…」
「全然釣れねーぞ…」
「まあ…気長に待ちましょう」
するとルフィが首だけ此方に向けながら言った言葉に「ムリー」とだけ返すと、「なんでだー!」と釣竿をぶんぶん振り回していた。
無理無理。
もうあんな大きな魚釣れないよー。
まあ動くのがめんどくさいとも言うけど。
…言わないか。
するとナミががたりと椅子を鳴らして立ち上がった。
見上げると、眉を寄せながら深刻そうな表情。
ロビンと共に首を傾げると、ナミは芝生甲板へと行き海を見て
「ユーダ海流…!」
そう言った次の瞬間、周りの海から一束波が蛇のように天向けて聳え立った。
おぉ、と呑気に眺めているとまた一束、また一束と、そうしてサウザンドサニー号は蛇のように蠢く波に囲まれた。
一つの波がサニー目掛けて向かってくる。
「チッ!」
するとゾロが飛び出して波を切った。
少し間を置いて、波は水分子に戻って辺りを濡らす。
え…波って切れ…
「危ないから名前はルフィの元に行ってなさい」
ロビンの手にひょいひょいと促されて着いた先は、船首に向かっていたルフィの元。
「ありがとな、ロビン!」
そう言って私を抱き寄せたルフィは船首に上った。
っていやいやー、絶対此方の方が危ないだろー。
船首ってオイー。
船首って船の先頭だよ。
海流に先陣切ってく位置だよ。
すると波が3つ、私とルフィの元に向かってきた。
「つかまってろよ!」
「……ん、レリーフ」
ルフィの腰に手を回しながら能力を作用した。
「ゴムゴムのォ…ガトリング!!!」
全ての波に拳を叩き込んだ直ぐ後に、ルフィは私をまた抱き寄せてぐるりと前に背を向けた。
次の瞬間、弾けた水分子が滝のように降りかかってきた。
でも私はルフィが盾になってくれたお陰であまり濡れていない。
ぽたりとルフィの髪から滴が落ちてきて、見上げれば笑顔のルフィと目が合った。
「ありがとな、名前!」
ふにゃり
「…ん、ありがと」
「おう!」
「――サンジくん、あの波を登って!」
するとナミが双眼鏡で前方を見やりながらサンジに指示した。
「オッケーナミさん!」と言いながら舵を操るサンジに、私の頭にはさっきと同じような疑問が浮かんだ。
波って切れるのか。
波って登れるのか。
…まあいっか、何でも。
あ…ていうか波登るんだったら船垂直みたくなるから退いた方が良いよね。
ルフィから離れようと身を引いたら、直ぐにガッとつかまれまた私はルフィの腕の中へ。
「危ねェぞ!」
「いや…だって波登るって言うから、このままだったらルフィ私を支えなきゃならなくなるよ」
「にししっ!名前支えんのなんか簡単だぞ」
「……ありがと…?」
「おう!見えねェとこで危険な目に合われるなら、おれは見えるとこで名前を守るからな!」
ぎゅっと強く私を抱き締めたルフィに笑って「ありがとう」と今度はちゃんと言葉を紡いだ。
「海流の切れ目が見えたわ!風来バーストが使える!」
「よし、掴まってろよおめェらァ!」
「名前、つかまってろよ」
「ん」
「風来バーストォ!!!」
そうして私達は海流を抜けた。
101224.