それにしても…私がここで麦わら海賊団を抜けても早くその情報が広まらなきゃ無駄に迷惑をかけることになる。
…どうしようかなぁ。
「名前、具合悪いのか?」
「…なんで?」
「お前しかめっ面だぞ」
「………」
チョッパーに心配そうに聞かれてウソップに私のしかめっ面を実践された。
数秒ウソップの顔を見つめて、びしりとチョップを喰らわせる。
「あだァっ!」
「ごめん、虫が」
「嘘つけェ!」
「なあ、名前…」
「チョッパー。どしたの?」
「ウソップが風邪引いてると思うんだけど、本人は引いてないって言うんだ」
「………ウソップー」
「ななななんだァ?!言っとくけど俺は風邪引いてねェからな!」
「…チョッパー、嘘だよ」
「やっぱりそうか!ウソップ、医務室行くぞ!」
「引いてねェってえええ!」
「ウソップ、大丈夫だよ」
「っ?」
「チョッパーの薬は苦くないよ」
「ま、まじかよォ!良かったァ、じゃあ我慢してないで早く言えば良かっ」
「嘘だけど」
「って、えええええ?!」
「さ、行くぞウソップ」
「嫌だァああああ!!」
「行ってらっしゃーい」
「あ…具合は悪くないよ。ありがと、チョッパー、ウソップ」
そっか!良かった!と笑って、面白い物でも見つけたのか走り出した二人。
人混みの中で人二人位が私と皆の間にある距離で歩く。
皆の先頭を歩く、ルフィを見た。
「名前、おめェ夢ないのか?」
「夢…海賊王に、おれはなる…ってこと?」
「にししっ!そーだ!」
「んー…ある、よ」
「お!なんだ?」
「……秘密」
「なんだよ、気になるじゃねェか!」
―――ぴたり。
足を止める。
皆と私の距離が広がっていく。
そのままゆっくり後ろ向きに歩みを進める。
広がっていく、皆と、私の、距離。
「名前、おめェ夢ないのか?」
「…ちょっと、高望みだったかなぁ」
無理矢理に口元を軽く上げる。
そして私は皆にくるりと背中を向けて走り出した。
走って走って、人混みを抜けて、建物の路地裏に入った。
それでもざわざわと活気は届いている。
光が差し込まない暗い空間を歩いて、開いた場所に出た。
―…闇と同化していたように、違う道から男が一人、出てきた。
「…お前があの懸賞金5億Berryの奴だな…?」
「…多分ね」
「最近麦わら一味に入ったって聞いてよ…他の奴らは見た顔だったがお前は無くてな。…気付いたわけよ」
「………」
「まさか自分から来てくれるとは思ってなかったけどな!麦わらの一味に正面から喧嘩売ろうとは思わねェし…お前の意図が何にせよ、思ってもみねえ収穫だ。…自分から来たって事は分かってんだろ?――俺様の船に乗れ…!」
「………いいよ」
足を一歩、男の方へ踏み込んだ。
「―――…名前さん…?」
…うそ…、なんで此処に…
「…ブルック…―――」
101216.