<この話はもうすぐ『シャボンディ諸島編』に入ります。なので設定上はこの時点でエースに会うことは絶対に、断じて有り得ません。けどどうしても、原作沿いになる前にエースと会わせておきたかったので、原作ガン無視ですが登場させます!どうか目をお瞑りになられますよう、お願いします!>
「ルフィー!」
「!この声…!」
「エースか?!」
「お…?」
ロビンに借りた本を読んでいた夕暮れ、船の傍から聞こえてきた声にルフィが船から身を乗り出した。
…?エース?
すると人が下から跳んできたかと思うと船に着地した。
「よお、久しぶりだな!」
「ああ!どうしたんだ?」
「ん?いや、お前の船に名字名前が乗ったって聞いてよ。一目会ってみたくてな!」
「名前はやんねーぞ!」
「別に盗ろうと思って来たわけじゃねえよ。…ん?アンタだな?」
「あ…名字名前です」
「俺はエース。ルフィの兄貴だ。ま、血は繋がってないけどな」
そうして笑ったエースに私は「あ…」と声を上げる。
「ん?どうした?」
「いや…笑い方が少し似てるなあって」
「…!そ、そうか?」
「ん…真っ直ぐで素敵です」
「な、なんだコイツ!天然タラシか?!」
「火拳…名前はそういう奴だ」
ぽん、とエースの肩に手を置いたのはサンジ。
煙草をふかして、なんだか感慨深げだ。
タラシ…え、私が…?
なんか変な事言ったかな…。
「「宴だーっ!!」」
……やっぱり笑顔だけじゃなくて色々似てると思う。
ルフィとエースが同時にジョッキを掲げながら言った言葉にそう思った。
「名前、飲んでるか?」
「エース…」
「ほら、飲め!」
笑顔のままジョッキを渡されて口をつける。
…?なんか、苦い…?
「エースはどんな能力?」
「メラメラの実って言って火系だな。名前は能力を増大とか出来んだろ?な、ちょっとやってみてくれよ!」
「ん…レリーフ」
瞬間エースの手から炎がぶわっと出て、真正面に居たブルックに直撃してた(ブルックで良かった、とも言う)。
慌ててブルックに謝るエースをぼうっと見つめる。
火って事は体も熱いのかな…あったかいかな…。
……寒い。
ぶるりと寒気が背中を走る。
エースに貰ったのを飲んでから熱いけど寒いという何とも不思議な感覚になっている。
あと少し眠い。
エースの腕に触れた。
「?名前?」
「…あったかい…」
「ああ、メラメラの実だからっ…?!」
きゅうっとエースの首に手を回して抱き着いた。
「名前…?」
「おい…何して…」
静かになった空気の中でナミとサンジの驚いたような声が聞こえる。
すると固まっていたエースが私の背中に手を回してきた。
あったかい。
「俺あったけえだろ」
ふにゃり
「ん…あったかい」
「っ可愛いな名前!おいルフィ、名前くれ!」
「やるか!つうか何してんだエース!離れろ!」
ぐるんとルフィの腕が私の腹に回ってきた。
そしてぐんっと引っ張られて私はルフィの腕の中に。
ゆ、湯たんぽがぁあ…。
「離せー…」
「やだ!」
「ルフィあったかくないーエースあったかいー」
「おれだってあったけえぞ!」
「ルフィはメラメラじゃないよー…」
「っ!」
するとルフィはぐるぐると自分と私を包むように腕を回し始めた。
何重にも重なったルフィの腕は布団よりも厚くて、
「あったかい……」
ぽやぽやと意識が朦朧としてきて私は目を閉じた。
「………」
「なんだ?エース」
「ん?いやあ…お前にも漸くそういうのが来たかと思ってな」
「は?」
「何でもねーよ」
にやにやと此方を見るエースに首を傾げるルフィ。
すると眉を寄せながら何か考え込んでいたゾロが名前のジョッキに口をつけた。
「これ…酒だぞ」
ぴきり――。
二度目の空気の停止だ。
船首にいるウソップとチョッパー、フランキーの声だけがする。
「なるほど…?なーんか変だと思ってたのよね」
「勝手に酒飲まされちゃ困るぜ…?火拳」
「ふふっお気の毒に」
(数秒後、火拳の叫び声が海に響いた)
101213.