「…ゾロー」
「あ?名前か、どうした」
「…私も筋トレして良い?」
「…お前がか?」
ゾロが何時も筋トレしてる部屋をひょこりと覗けば予想通り、私からしたらあり得ない大きさのダンベルを片手で上下させているゾロ。
私の問いに目を見張るゾロに頷いた。
「少し力つけなきゃ…昨日みたいに首掴まれて持ち上げられただけで能力解けてちゃ駄目だなあって」
「まあ…良い心がけじゃねえか。オラ、一番軽いやつ」
「あり、」
どん!
「………」
「………」
「…(じわあ…)」
「な、泣くな!大丈夫か?!」
軽く受け取ろうとしたダンベルはがくんっと指を通過点に私の足の上に落ちた。
生理的に涙が浮かんだ私にゾロは狼狽える。
そしてダンベルを持ち上げてがしと頭を掻いた。
「無理じゃねえか?」
「…頑張る」
「じゃあ…落とすなよ」
「ん」
今度は落とすまい。
絶対に。
がくんっ
「!」
「…っ…」
「…おい、やっぱり無理じゃ」
「だいじょ、ぶ…っ」
落とさなかった。
落とさなかったけど腕がいきなり下がった。
体ごと持ってかれそうになったのをゾロが慌てて肩を支えてくれて、足に力を入れてなんとか踏ん張る。
「…持ち上げてみろ」
「………ん、」
「………」
「っ…」
「………」
「うぐ……っ」
これで一番軽いってなんだ…!
ぐぬぬぬと力を入れるも指先だけが必死に白くなりつつダンベルを支える。
持ち上げる、というか動かす事すら危うい。
するとひょいとダンベルが軽くなって、見るとゾロが片手でそれを持ち上げてくれている。
もう片方は私を支えたままで。
「………」
「………」
「…これ、意味無いよね…?」
「…つい、」
ついってなんだ。
「サンジー」
「お、どうした?名前」
「皿洗いするよー」
ゾロとの筋トレを終えて(まあ特に何もしてないけど)厨房にやって来た。
思った通り居たサンジと、積み重なったお皿の山。
私は軽く腕捲りをして左手にお皿、右手にスポンジを持った。
「悪いな、名前」
「何時も美味しいご飯作ってくれてるからー」
「っ…!」
「だからサンジはナミにお茶でも、あれ…?」
サンジを見ればバンバンと机を叩きながら震えていた。
…ま、いっか。
ふわふわと泡を立ててお皿を洗う。
シャボン玉がふわりと浮き上がってきて思わず頬が緩む。
するとサンジが私の頬を拭った。
「泡ついてんぞ」
ふにゃり
「ありがとー」
「っ…!」
…早くナミにお茶あげなよ。
101214.